まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰。

ストーリー
親友の相羽遥平から彼女ができたと打ち明けられた、高校1年生の向井弘凪。
とある事件以来、弘凪は遥平に対して負い目を感じており、女の子に好意を持つことを避けてきていたのだった。
ようやく遥平に彼女ができた今、弘凪も気になる女の子に話しかけてみようと決意するのだが……。



あああああ! もう!! また!!! こういうのを!!!! 書いてくるんだからっ!!!!!
野村美月先生の新作で、青春学園恋愛もので、しかもこのタイトル。これ絶対間違いないやつだよな……と期待爆上げで臨んだんですが、あまりにも軽くそんなハードルを飛び越えて来られてしまって、私もう、ため息しか出ません。
野村先生の繊細な筆致で描き出される思春期の少年少女の三角関係。最初から最後までぎゅうううっと胸が痛くなって、読み進めるのがとても辛いのだけれど、その中で確かに感じられる恋の拍動。
凄まじい出来の単巻青春ストーリーでございました。感想などこのひと言で事足ります――最高です。


まず第1章からして凄いんです。凄く辛い。危うく呼吸困難になりかけました。
爽やかイケメンで性格もよくて女子にもモテモテ、でも彼女は作らない、そんな親友・遥平がついに彼女を作った! なんて素晴らしいこと!
でもその彼女というのが、自分がずっと前から気にしていた、でも話しかけられずにいた、あの女の子だったら……。電車で毎朝姿を眺めて、持ってる本の趣味が合うな、なんて思ったりしつつ、たまに目線が合ってお互いに気まずくなって視線をそらしたりしていたあの子だったら。
しかも、遥平は真っ先に、弘凪にその子を紹介してくるわけです。なんてったって親友だから。なんだこれは。苦しすぎるでしょう。
自分の方が前から彼女のことを気にしていたはずなのに、親友の方が先に彼女の名前を知っていて(古都っていうんだな)、彼女の声を知っていて(こんな風に喋るんだな)、彼女と付き合いだしている(ああ……)! あの子が親友の隣で頬を染めて照れている(あああああ)!
勘弁してください。精神力ガリガリ削られてそろそろゼロになりそうです。


親友の彼女なんだ。好きになっちゃいけないんだ。そう思ってできるだけ近づかないようにしているのに、なぜか何度も出会ってしまう弘凪と古都。
一緒にいる時間が苦しくて切なくて、でも楽しくって、どうしようもなく恋の深みにはまっていってしまう弘凪の気持ちが手に取るように分かってしまって、困りました。
古都の方も、遥平の彼女のはずなのに、なぜか妙に思わせぶりな態度なのがなんともにくい。
許されないはずの、ふたりっきりでの秘密のやりとり。罪悪感を覚えつつも、その分ドキドキしてしまって、もうこうなってしまったら止まらない。だって好きなんだから。


やがて訪れる修羅場、過去の出来事、そして三角関係の裏にあった真実。
結末に向けて一気に畳み掛ける恋のデッドヒートから、一瞬たりとも目が離せませんでした。
最後のページを閉じてようやくひと息。はあ……ほんとうに素晴らしい1冊です。
読むのにかなりエネルギーを使うけれど、これから何度でも読み返したい、本棚の宝物になりそうな物語でした。ありがとう。野村先生ありがとう。


イラストは河下水希さん。この表紙はちょっと卑怯じゃないですか。こんなん手に取っちゃうに決まってるでしょ!
漫画家さんだけあって、モノクロイラストも雰囲気が出ていてよかったです。


それにしても相変わらず本が読みたくなるな……。SFの巧妙な宣伝かな?