まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

晴追町には、ひまりさんがいる。 恋と花火と図書館王子

ストーリー
片想い中の人妻・ひまりと一緒に花火大会へ行くことを画策する春近。
ところが花火大会の目玉“虹のエール”三百玉が消失してしまうという事件が起こる。
最近引っ越してきた隣人の関与を疑う春近は、ひまりに相談を持ちかけるが……。



晴追町の人々の営みの中、あちらこちらに垣間見えてくる、淡い恋の数々を描くシリーズ第2弾。
切ない! 切ないよ! どれもが叶うわけではない恋に悩みながらも、大切な人を遠くからそっと見守るだけしかできない優しい人たちの想いが、ぐっと胸に迫ってきます。
もちろん、なんといってもいちばん苦しく描かれるのが春近だったりするのですが……くううう、悶えちゃうね!


ひまりさんと一緒に花火大会に行こう、なんて、不埒な計画に思いを馳せる大学生・春近くん。
有海さん(犬)がいるとはいえ、ひまりさんったら、やっぱり無防備ですからね。気持ちが暴走しちゃうのも分かるんですが。
しかも、花火大会の日付がひまりさんの誕生日だったりして。そりゃもう、青春な妄想大爆発ですわ。仕方ない。
でも、ひまりさんのことを知れば知るほど、彼女が旦那のことを大好きなんだってことが分かってきて、すごく切なくなってきます。そりゃあ、人妻に恋をしちゃったのだから当然のことなんですけど……。
いっそ、旦那がちゃんと姿を現してくれれば諦めもつくだろうに、結局七夕に影だけ見て以来まったく出てこないんだから、困ってしまいます。
お気に入りのサンダルにうきうきしているひまりさんに出くわして見とれてしまったり、サンダルと一緒に買ったというミニスカートのワンピース姿を想像しちゃったり、春近くんを見ていると恋っていいなあと思うんですが、いかんせん土台が苦しすぎるよ……。


春近だけでなく、その巴崎も、園長も、新キャラの「図書館王子」も、みんな叶わぬ恋をしています。
自分の好きな人が、他の人のことを大切に思っている。それを間近に見るのはやっぱり辛いし、悲しい。
ちょっとしたことで落ち込んだり、嫉妬したり、でもその気持ちは誰にも届かなかったり。ああ、なんでこうも上手くいかないんだろう。読んでいる側としては、このもどかしさがたまらなく好きなんですけどね。
そんな中、第二話の巴崎とその「親友」ヒロセのエピソードは、また特別な読み心地で好きでした。
友人だから信じられること、友人だから打ち明けられないこと。ヒロセの強い感情に驚いてしまうけれど、その奥底には本当の思いが隠されていて……。巴崎の、思わぬ友情の篤さにほっこりするお話でした。
さて、エピローグでは、春近くんが空を飛びましたね。次回、春近とひまりさんはどうなってしまうのか。ううん、早く読みたい!


ヒロセはお気に入りのキャラなので、ぜひ再登場してほしいな。