まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

東京聖塔

東京聖塔 (MF文庫J)

東京聖塔 (MF文庫J)

ストーリー
10年前、東京都新宿区に突如として現れた、RPGのような世界を内包する謎の塔・東京聖塔。
攻略者の願いを叶えてくれるという文句に多くの者が挑むも、90%が命を落とし、未だ制覇には至っていない。
妹の奇病を救うため、千畳敷一護は東京聖塔への挑戦を決めるのだが……。



願いを叶えるために危険なダンジョンへと挑む、現代ファンタジーアクション。
面白かったです。一点特化の最強スキルを持った主人公が、ギリギリの戦いをしつつも密かに快進撃を続ける展開が熱い。
憧れの先輩ヒロインの照れっ照れぶりも可愛らしくてよかったですね。


妹のために生存率1割という過酷なダンジョンに挑む主人公・一護。
ファンタジー世界の住人ならともかく、現代日本に住むごく一般的な高校生がその決断をするのですから、よほどの覚悟が窺えるというものです。まあ、単純にゲーム脳という可能性も無きにしも非ずですが……。
なかなか階層の攻略が進まずに停滞している現状を鑑みて、短期間での制覇を目指す一護が選んだのは、最大3分の間だけ超高速移動を可能にするスキル「高速剣」。
このスキルを得るために、軒並み低すぎる基礎能力の底上げも諦め、貴重な神器の装備も諦めて、その身一つで塔の中へと踊り込んでいく一護さんってある意味凄い。
考えなしというか無茶というか、だいたい命が懸かってるんだから決めるにしてももうちょい悩んだらどうなのとか、色々言いたいこともありますけど、愛する妹のためにそれだけ猪突猛進になれるところには好感を覚えます。
それにしても高速剣はおいしい設定ですね。この最強スキルを使える3分間だけが全ての勝負。時間切れになったら負け。実にわかりやすい。
スキルを使っているとき以外はめちゃくちゃ弱いから、他の誰にもスキルのことを明かせないってところがまた、まさに「奥の手」、ハイリスクハイリターンの「必殺技」という感じで、熱いなあと思います。


主人公が(普段は)最弱ならば、そりゃもうヒロインは最強でなくてはいけません。素晴らしき様式美。
しかもそれが、ダンジョン外での知り合いで、憧れの先輩だというのだから完璧です。
最弱と最強。後輩と先輩。塔の中でも塔の外でも、秘密の共有関係。いいじゃないですか。燃え上がるね! こう、色々なものがね!
開けっぴろげすぎる一護に対して、いちいち初心な反応を見せる葉桜がとても可愛らしかったので、今後のニヤニヤ展開にも期待しています。


イラストは富岡二郎さん。口絵のアスラは迫力があってよかったです。
文中でも、バトルシーンのイラストが見てみたいところ。


ほとんど出番のなかった淡雪だけれど、最後のイラストを見た瞬間に好きになりました。我ながらチョロい。