まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ゴスロリ卓球』感想

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ストーリー
卓球部のエースで幼馴染みの斎木羽麗が失踪した。父親の抱える8000万もの借金を返済するため、金持ちが道楽で主催する“闇卓球”の選手として戦うというのだ。闇卓球――それは、ゴスロリ服を纏った少女たちによる卓上のマネーゲーム。その勝敗に途方もない金額を賭けて行われる、常軌を逸したギャンブルだった。この狂った世界から抜け出す方法は一つ、卓球で勝ち、稼ぎ続けること。羽麗を捜し、彼女の許へとたどり着いた坂井修は、幼馴染みを借金地獄から救済するため、共に命を賭けたギャンブルに挑む――。

蒼山サグ先生の新作は卓球モノ! しかし今回はまっとうな青春ではない……大金を賭けて天才どもが鎬を削る闇卓球だ!
ゴスロリ+ギャンブル+卓球と要素マシマシながら短いページ数でしっかり物語を展開していくのはさすがです。
ただ、肝心の卓球部分がわりと淡々としていてスポ根感がなかったのは残念かな。逆にギャンブルの部分がメインのようにも思えました。卓球の勝負とギャンブルの勝負と、二重の戦いが繰り広げられるのが楽しい。


突然失踪した幼馴染みの少女・羽麗。彼女の行方を追って修が直面したのは、羽麗が父親の8000万の借金を自ら返済しようとしていること、そしてそのために大金を賭けた「闇卓球」に選手として出場しようとしていることだった!
高級ホテルの隠されたフロアで夜な夜な行われる闇の卓球ゲーム……出場する選手にはゴスロリ衣装の着用が義務付けられている……。フィクションにしても現実味が一切なくてちょっと笑ってしまいましたが、こんな風にリアリティをぶっ飛ばしてエンタメに振り切っている作品は好きなんです。せっかく可愛い女の子が卓球してるんだから、格好も可愛く決めてもらいたいもんね。わかる。
設定だけでなく、羽麗もなかなかにぶっ飛んだヒロインでした。幼馴染みにしたって、修に平然と着替えを手伝ってもらったり、一緒にお風呂に入ろうとしたりするのはどう考えてもおかしいだろ! いいぞもっとやれ!


試合のルール自体は普通の卓球と同じだけれど、1点入れるごとに100万単位の大金が動く闇卓球。
単純に試合で勝てば儲かるというわけではなく、自分にサーブ権がある時には1点に手持ちの資金を掛けあわせることができるというルールによって、試合に負けてもギャンブルには勝っているというようなことが起こる。
当然卓球の方もある程度強くなければならないけれど、目的は金を稼ぐことだから、むしろどのタイミングでどれだけ金を投入するか……そういった戦略性の部分の方が大切になってくる。上にも書いたように、卓球自体よりもむしろそちらの方をメインに書かれたようにも見え、ギャンブルものとして面白く読めました。
それでいて、最後のゲームではそういった計算をぶん投げるような展開も用意しているんだから、なかなか油断ならないな! 羽麗はもともと魅力的なヒロインでしたが、ここで本格的に可愛さが開花した感じですね。
深く暗い闇卓球の世界。そんな奈落の底で少年と少女は生き抜いていくことができるのか。続きに期待です。


イラストはマナカッコワライさん。ううむ、大変に魅惑的な表紙である!
羽麗×ゴスロリ服がめちゃくちゃ似合っていて可愛さ満点なのだけれど、どうしても胸元に目線が行ってしまう。許して。


黒塗りの車を迷わず追跡する修さん行動力ありすぎじゃない?

『「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。』感想

ストーリー
クラスでも目立たず友達のいない男子高校生・駒田に、となりの席のクールな美少女、水品さんが、ひそかに声をかけてきた。「15分で1万円のバイトに興味はありませんか?」水品さんが決して笑わない理由と、怪しい仕事の真の目的は……? 傷ついた過去やトラウマを持つ二人が出会い、ある仕事を経て次第に立ち直っていく、ミステリータッチの優しい青春ストーリー。第7回ポプラ社小説新人賞<特別賞>受賞作!

作者がTwitterで熱心に宣伝しているのを見かけたので読んでみました。怪しいアルバイトから始まる謎めいた女の子との青春ストーリー、ミステリー風味。
良かったです。期待していたミステリー要素はそれほど強くなかったけれど、読みやすく、各話きちんと驚きもあり、そして敢えて大きな主語で言うならば「現代人」の胸に色々と刺さるものがある物語でした。
決して笑わない謎の美少女・水品さんが何より魅力的ですね。八割方は何考えてるかわからないのだけど、残り二割がとても可愛い!


「15分で一万円もらえるアルバイトに興味はありませんか?」
隣の席のミステリアスな美少女からいきなりこんな怪しげなメモを渡されたらどうする? 誘いに乗っちゃう? だよね、だって男の子だもの!
学校に来ない日も多く、友達がいる様子もない謎めいた女の子・水品さん。そんな彼女に言われるがまま、駅のホームの売店で雑誌を買い、指定された電車の席に乗る……それだけのアルバイトをやることになった主人公の駒田。何が何だか分からないままに終わったアルバイトの裏には、しかし意外な真相が隠れていた!
謎のヒロインと謎のアルバイト。いいなー憧れちゃうなー。平凡な日常の中に突然現れた小さな事件ってやつ。
話題の美少女との、他の誰も知らない秘密の関係っていうのがまた素敵です。妄想たくましい思春期の少年には少々刺激が強すぎるな!


アルバイトを続けるうちに、少しずつわかってくる水品さんのこと。なぜか絶対に笑おうとしないこと。カメラが苦手でスマホも持っていないこと。どうやら彼女の過去に何か理由があるらしいのだけれど……。
自身も同じようなトラウマを持つ駒田だからこそ、水品さんの心の支えになれるかもしれない。そんな風に悠長に思っていたら、まさかこんな展開が待ち受けていようとは……。かなり衝撃的な内容ではありますが、それと同時にどこか痛快でもありました。水品さんやってくれるな……なんて危険な女なの……。
人は誰しも無邪気な悪意を持っている。それ自体は大した犯罪でもなんでもないかもしれないけれども、傷ついた少年少女をさらに傷つけるには十分な殺傷力を秘めた刃。自分は無意識にそれを振りかざしていないだろうかと、そう自問させられる。
水品さんや駒田のように立ち向かうことはできないかもしれないけれども、せめてそういったことにきちんと向き合う勇気がほしいな。そんな風に思わせてくれる、優しくも手厳しいお話でした。
最初にも書いたとおり、(特に終盤の)水品さんはかなりの可愛さを誇っているので、シリーズ化してくれないかなと密かに期待しています。


幼いようで大人な妹ちゃんがかなり好き。

『JK堕としの名を持つ男、柏木の王道』感想

JK堕としの名を持つ男、柏木の王道【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
最強の会社員、爆誕。闇堕ちしたJKたちを社会人パワーで蹂躙&救済! モテまくる!? 有栖川グループ社員の柏木啓介はある日、社長の思いつきで備品として聖ルルド学園へ送り込まれる。そこでは資産家令嬢のJKたちが『借金返済ゲーム』と称し、殺し合いをさせられていた。大人として見過ごせず、柏木は備品枠でゲームに介入。生徒会の久遠寺玲花を倒し、泣かし、救済する。「サービス残業だ。お前たちは俺が救う。あとは任せろ」「こんな大人、初めて……っ。オジサマ、素敵!あたしを抱いて!」絶望したJKたちを救うため、柏木の快進撃が始まった。会社員と女子高生の新たな王道、ここに開幕!

資産家の子息たちが金と命を賭けて競い合う学園を舞台に、社畜という名のスーパーマン主人公が無双しつつJKを堕としていく学園アクション!
面白かったです。セガールよろしくの活躍ぶりを見せる主人公の、どこかズレた格好良さがとてもいいですね。社畜への幻想がすごい(笑)。
タイトルから予想していた直球エロは意外と抑えめだったけれども、いつそっちの方向に行ってもおかしくない雰囲気があってドキドキしました。期待しちゃうだろー!


没落寸前の資産家の子息たちが、自らの命と引き換えに金を奪い合うという地獄のゲームに興じている聖ルルド学園。世界有数の財閥令嬢・姫乃の「差し入れ品」としてそんな学園に潜入したのは、JK堕としの二つ名を持つ最強の社畜・柏木だった……。
弾丸は避ける。切っても突かれても死なず、爆発に巻き込まれても炎の中から蘇る。不死身の肉体と無敵のパワー、明晰な頭脳までも持つ28歳。邪悪なるルルド学園上層部の闇を暴くべくヘリから降り立った彼は神かヒーローか……いや、「社畜」だぁぁぁぁ!
とりあえずそんな感じで、ただひたすら社畜・柏木の無双を楽しむストーリーとなっております。どこまでも人間離れした身体能力で周囲を唖然とさせていく最強ぶりが最高にクールでいい。彼によれば社畜にとっては普通のことらしいけれども、それは一介の会社員が放っていいパンチではないぞ柏木よ。社畜ってすげーや!(目をキラキラさせながら)


ヒロイン・姫乃は立場こそ財閥令嬢ではあるものの、柏木に比べればいたってノーマルな女の子。周りに非常識な人間が多すぎてツッコミが大変そう……(もちろんボケの大半は柏木である)。か弱いようでいて芯をしっかりと持った魅力的なヒロインでした。
姫乃は普通の価値観を持ったJKだけれども、そんな彼女は、学園到着早々に襲ってきた少女・玲花や、ルルド学園を取り仕切る生徒会の刺客・ユーリヤなど、ルルドゲームに慣れた他の生徒たちからすると格好の獲物。
しかし主たる姫乃が一方的に嬲られるのを我らが柏木が許すはずもない! 降りかかる火の粉を払うのみならず敵だったJKのハートまで堕としてしまう鬼畜な社畜、それがJK堕としなのである!
ということでエロ方面にもかなり期待して良さそうな雰囲気なんですが、まだそこまで直接的な描写はなくて「待て」を食らった気分。JKに興味がないとのたまう柏木を肉食ヒロインたちがどう攻略していくのか、そういう見方でも楽しめそうですね。続刊が楽しみです。


イラストはkakaoさん。どエロいイラストの数々、最高でした……!
柏木の社畜パンチ(格好良い)も良かったです。


あとがきのクッキー挿入ゲームってなんじゃー! 気になっちゃうだろ!