まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『薬屋のひとりごと8』感想

薬屋のひとりごと 8 (ヒーロー文庫)

ストーリー
毒で体調を崩した姚が医局勤めに戻れるようになった頃、猫猫のもとに大量の書物が届いた。送り主は、変人軍師こと羅漢。碁の教本を大量に作ったからと、猫猫に押し付けてきたらしい。興味がないので売り飛ばそうかと考える猫猫の考えとは裏腹に、羅漢の本によって、宮中では碁の流行が広がっていくことになる。一方、壬氏はただでさえ忙しい身の上に加えて、砂欧の巫女の毒殺騒ぎや蝗害の報告も重なり、多忙を極めていた。そんな中、宮廷内で碁の大会が企画されていることを知った壬氏は、羅漢のもとに直接交渉をしかけに行く。開催場所を壬氏の名前で提供する代わりに、さぼっている仕事をこなすように説得するのだが――。

またしばらく更新が空いてしまいました。お久しぶりです。
最近またラノベ熱がぶり返してきておりまして、ずうっと積みっぱなしだった『薬屋のひとりごと』をふと思い立って読みはじめましたらば、またこれがエラく面白くて一気に全部読んでしまったので、まとめて感想を書いちゃおうと思った次第でございます。
ということでタイトルには「8」と書きましたが、シリーズ全体の感想になっているのでご了承をば。


物語のジャンルでいうと……難しいですね、中華ミステリー風日常ドラマ+ラブロマンスといったところですか。謎解きモノではあるんだけれどもミステリーというほどそっちに特化しているわけでもなく、かといって恋愛がメインでもなく。では何かといえば、毒をこよなく愛する変人ヒロイン・猫猫が突飛な行動で周囲を驚かせていくのをひたすら愛でる物語なのではないかと思います。
そう、今作の何よりの魅力は主人公の猫猫にあります。彼女は高級妓楼にほど近い薬屋の娘として生まれ、毒や薬(だけ)に深すぎる関心を持った根っからの変わり者。
そんな猫猫が人さらいに遭い、後宮の下女として働きはじめるところからお話が始まるわけですが、とにかく徹底して描かれるのが猫猫の特異さ。
義父ゆずりの広範な知識と毒や薬に関する深い造詣を用いて後宮内で起こる事件を次々に解決に導いていく姿。天女のような顔面を持つために誰しもが見惚れてしまうという謎の宦官・壬氏に対しても、顔を赤らめるどころか「毛虫でも見るような目」を向ける姿。金や昇進には欠片も興味を向けず、貴重な薬草や毒物に対してだけ異様なこだわりを見せる姿。
他の下女から嫌がらせを受けても全く気にしないけれど、人の命がかかった時には修羅のように激怒する格好良い姿。
いやあ、僕はイケメンヒロインが大好物なんですよ! 水晶宮での猫猫には痺れました……。
後宮でも外廷でも花街でも、どこの人々の中でも違う、そんな特別な姿を見ているだけで面白く、ワクワクさせられてしまうのです。


下女として2年間の奉公が終わればそれでいいと思っていたのに、自分の思う通りに行動した結果なぜか様々なお偉方のお気に入りになっていってしまう猫猫。
せっかく後宮を出てもまた壬氏の下女として雇われてしまったり、とある派閥に誘拐されたり、異国への旅路に付き合うことになったり、そしてそんな日々の中で壬氏の秘密を知ってしまったり。
特別な才能を持った人物はやはり特別な立場を得ていくもの。やっぱり猫猫が周囲に認められていくのを見ると嬉しくなってしまいます。ただ安寧の日々を過ごしたいだけ、という当人には申し訳ないけれども……。


さて8巻の話ですが。7巻での事件を経て、同僚の姚や燕燕と友人といってよい仲になった猫猫にほっこり。意外なほどちゃんとした友人関係を築けているようで何よりです。姚はともかく、燕燕も猫猫に負けず劣らずの変人ぶりですからね……。そう、友人といえば、小蘭のことも気になります。再登場してくれないかなあ。
一方、世間では羅漢主催の碁大会が開催。羅漢に勝ったら願いを叶えてもらえるという噂も立つ中、対決相手として名乗りを上げたのはやはり。
いやあ、恋愛がメインではないと書きましたけど、やっぱり猫猫と壬氏の二歩進んで一歩下がる関係性は大いに気になるところです。今回ラストで結構な「王手」をかましてくれた壬氏ですが、あとは猫猫がどう出るか。恋愛ごとには全くの無関心を貫いている猫猫だけに、そここそが最大の問題なのですが……。


今作は「匂わせ」の描写が多くて、この一文はつまりどういうことなのだ、と、読んでいて結構頭を使います。もちろんそこがオシャレなところだったりもするんですけども、二度三度と読み返すことでまた新たな発見があるような気もするので、またじっくり頭から読みたいですね。
あとなぜかコミカライズが2種類出ているのですが、熱に浮かされたように両方全巻ポチって読みました。じっくり描くことで絵の力を感じることができるビッグガンガンコミックス版と、原作に沿ったエピソードが豊富に読めるサンデーGXコミックス版、どちらもそれぞれの良さがあってオススメでございます。
ともあれ、次の巻が待ち遠しいですね。刊行はずいぶんスローペースのようですが、この完成度なら仕方ないかな……とも。


四夫人なら誰推し? ぼくは里樹妃ちゃん!