まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『傀儡のマトリョーシカ Her Nesting Dools』感想

傀儡のマトリョーシカ Her Nesting Dolls (講談社ラノベ文庫)

ストーリー
文芸部の阿喰有史はある使命を受け、友人(部員)を集めていた。勧誘対象の一人、雑賀更紗がいじめをうけているとの情報を得る。半ば強引に雑賀を入部させ、他の部員達の協力のもと、いじめの犯人を捕まえることに成功。だがその犯人はカースト上位の池永の命令で雑賀への嫌がらせをしていたという。池永に会いに行くと、彼女もまた何者かに脅されていた。脅迫の連鎖はさらに続き、首謀者の影も見つけられない。そんな頃、文芸部員宛に「捜査を止めなければきみたちの秘密をバラす」という不審なメールが届く。脅迫するに足る秘密を、犯人はどう入手しているのか? そしてその脅迫に隠された真の目的とは!? 事件の結末に驚愕する学園ライトミステリー!

真犯人は別にいる
ニコ生配信で視聴者の方からオススメいただいて読みました。第7回ラノベチャレンジカップ<佳作>受賞作品。
感情の希薄な少年が学校内でのいじめ事件をきっかけに次々と新たな謎と対面して、思わぬ真相へと辿り着いていく学園ミステリー。
うむうむ、良かったです。伏線の散りばめと回収がばっちり決まっていて唸らされました。
他人とは違う物差しを持った主人公の独特な価値観からくるユニークな会話劇が素晴らしいですね。センスを感じる1冊でした。


入院している姉の学内復帰の場所として文芸部への部員勧誘に励む少年・阿喰。勧誘活動の中、学年一の美少女・雑賀がいじめられているため、調査してほしいという依頼を受ける。
どうやら犯人らしき人物を確保したものの、その犯人は別の人物からの指令で動いていただけだった……。
いじめの犯人を探して見つけたと思ったら、また新たな真犯人が登場する入れ子方式のミステリー。なるほど、それでこのタイトルですか。
あらすじにライトミステリーとあったので謎解き要素は薄めなのかなとも思っていたのですが、個人的な感覚だと結構しっかりミステリーしてたように思います。
上にも書きましたが、伏線の張り方がいい。分かりやすすぎるわけでもなく、気付かないほどでもなく、ちょっと「あれ?」と引っかかるヒントがいくつもあって、僕のようなザコミステリー読みにはちょうど好みの具合でした。気付けると嬉しいしね。


主人公の阿喰は一般的な高校生とはだいぶズレた思考の持ち主です。空気を読めないというか読まないというか、自分に正直というか、端的に言えば変人というやつですね。
そんな彼から発されるセリフの数々は、言葉選びが独特でとても愉快。特に雑賀との間の漫才のような掛け合いがとても楽しい。
ある意味作中で一番の謎が阿喰で、感情の薄い彼の気持ちがどのように動いていくかというのが、この作品の第二のテーマなのかなとも思います。
なかなかショッキングな展開もありつつ、彼らなりの青春を感じる良いラストシーンでした。続編があるようには思えませんが、もしあるのならぜひ読みたいです。


イラストは山代政一さん。表紙力が高すぎる。めちゃくちゃお洒落じゃないですか……。
本文中のイラストもどれも雰囲気が出ていて最高でした。


39ページの「不思議」、読み終わってしばらく考えてからようやく真相に気付いたのだけど、思わず膝を打ったよね。