まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『処刑タロット』感想

ストーリー
クリア率98%のVR脱出ゲームを、ただひとり“真のバッドエンド”で迎えた高校生の鳴海恭平。その腕前をゲームの制作者である片桐渚に見込まれた鳴海は、死のリスクがあるという裏の脱出ゲーム「サドンデス」に招待される。鳴海はある人物を探し続けていた――デスゲームに身を晒し続ける“死にたがり”のクラスメイト・梨々花。しかしゲームの中で再会を果たした彼女は、「処刑タロット」と呼ばれるカードの呪いに囚われていた! 梨々花を救うためには、危険なゲームをクリアし、すべての「処刑タロット」を集めるしかない。だがゲームには、他にも様々な事情でカードを手にした少女たちが参加していて……!?

土橋真二郎先生の新作はタロットをモチーフにした脱出デスゲームもの。
まあいつもの調子ではあるんですけど、ゲームにいまいち統一感がなくて全然別の話を読んでるようだったのが、ちょっともったいないかなと思いました。
それぞれの話はよかったです。特に2つ目「異世界RPG」のあっさりした結末は好みですね。


今回のテーマは脱出ゲームということで、無人島からの脱出、VR世界のRPGからの脱出、樹海のダンジョンからの脱出が描かれました。お話として好みなのはRPG、ゲーム的に一番面白かったのは樹海ですかね。
RPGは、ゲームの仕組み自体は大したことないんだけれど、やることをやったらサクッと世界からいなくなっちゃう主人公たちのリアリストぶりがいい。まあ後味は悪いんですが、ゲームはゲームだしね。
樹海は、なんとなく一番いつもの土橋作品らしいかなと。カードを集めてアイテムを得る中でトレードという概念が生まれ、人間関係が変化していく。エロもあれば残酷な罰ゲームもある。発想の転換によって脱出方法がわかる展開もよかったですね。


キャラクター陣は、まあ主人公の恭平は脇においといて、ヒロイン・梨々花に性別不明の後輩・渚、ストイックな武力担当・紅と、それぞれ魅力的でした。というか渚は結局、そういうことでいいんですよね?
もちろん私としては、タロットを全て集めて梨々花を守りきり、華々しくカップル成立――の未来を期待していますが、さてどうなりますか。
生徒会の刺客となった美玖もかなり好きなんで、何かの間違いでそっちに行くのも可ですよ!


イラストは植田亮さん。毎度ながら惚れぼれするイラストです。
見てくださいよこの表紙。瞳に吸い込まれそう。


あとがきの魔王様の微笑ましさ。