まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

皿の上の聖騎士1 ― A Tale of Armour ―

ストーリー
ご先祖様が大陸中の霊獣を訪ね歩いて防具を授かり、一着の聖なる甲冑を手にしたという伝説を残すフィッシュバーン家。
16歳になった長女アシュリーは、成人の儀とともにその甲冑を受け継ぎ、聖騎士として任じられる予定であった。
ところが彼女の弟アイザックは、アシュリーの聖騎士叙任の儀式で、姉の思わぬ姿を目撃することとなる……。



十二の欠片に分けられて霊獣たちに捧げられることとなった姉の身体を取り戻すべく戦う、運命に抗う少年少女の冒険ファンタジー。
ストレートな剣と冒険の物語でもありつつ、しかしキャラクターには重い運命を背負わせる、三浦先生らしさをひしひしと感じるファンタジー作品でした。良かったです。
いきなり厳しい展開ではありつつも、蛇の姿になった姉と、彼女を嫌っていた弟の、少しヌけたやりとりにはほっこりしますね。


大陸中の霊獣たちから超常の防具をもらって得た甲冑の力で、かつて弱小国だったレーヴァテインを大国へとのし上げた英雄“聖騎士”。
彼の血を引くフィッシュバーン姉弟の姉・アシュリーは、成人の儀とともにその甲冑を受け継ぐ記念すべき日を迎えます。
ところが彼女が甲冑を着用した途端、彼女の身体は十二の欠片に分かたれ、それぞれの防具を与えた霊獣の元に……。伝わっている伝説とは異なる大いなる陰謀が、その甲冑には隠されていたのです。
弟・アイザックはなんとか残せた姉の「頭部」だけを抱えて、大国レーヴァテインを敵に回し、霊獣たちの思惑にも逆らい、姉の身体を取り戻す旅へと出立するのでした。
いやあ、序盤からいきなり怒涛の展開で、一気に引きこまれますね!
容姿端麗で騎士としても一流の姉と、そんな彼女に引け目を感じ苦手意識を持っていた弟。仲良く見えた姉との間に実は壁を作っていた弟だけれど、いざ姉の危機となったら国を敵に回してでも彼女を守る。まだ年若い姉弟の絆に胸が熱くなりました。


霊獣の加護によって白い蛇の姿になった姉の「頭部」とともに、大陸各地の霊獣たちのもとへ赴くアイザック
見た目は蛇ではありますが、アシュリーはとても魅力的なヒロインでしたね。弟のことを心から愛していることが言葉の端々から伝わってきます。一旦は自分の運命を受け入れたけれど、姉を失いたくないという弟の意志の方を優先するあたりに、姉の懐の大きさを感じました。
ドラゴンと話し、ヒュドラと戦い、新たな仲間の「ドラゴンの娘」イザドラを加えてグリフィンに挑んだアイザックとアシュリー。人の身ではとても太刀打ちできない偉大な霊獣たちばかりですから、当然、何も失わずに、というわけにもいかず……。
姉の身体を取り戻す前に、弟の身体がなくなってしまった、なんてことに(冗談ではなく)なりかねない。そんな冒険がまだ十も残っていることに気が遠くなりそうですが、姉の知恵や頼りになるイザドラの力を借りながら、目的を達するべく頑張ってもらいたいですね。次巻も楽しみです。


せっかくの冒険ファンタジーだし、地図がほしいな。