まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

祓魔学園の背教者IV ―紫色の黙示録―

ストーリー
ルネサンス”残党の拠点を突き止め、その討伐へ向かった影縫。
しかし彼は、“ルネサンス”幹部の“原初の悪魔”の手によって撃退されてしまう。
一方学園では、影縫から「絶対にあけてはいけない」と言われ預けられた箱を、翠花が開けてしまい……。



全ての謎が解ける最終巻。あらすじでは完結だという言及がなかったので、どうかな、と思っていたのですが、やっぱり終わりでしたね。もう、表紙のミトラがいかにも「最終巻!」という感じの表情でしたから、予想はできていましたが。
個人的には、周囲から嫌われながらも、数少ない信頼できる仲間たちと共に、このまま歩いてゆく……みたいな展開を期待していたのですが、物語は思わぬ方向へと舵を切っていきました。
この結末をハッピーエンドと呼んでいいものかどうか、ちょっと悩ましいところではありますが……。敵との総力戦は間違いなく盛り上がったし、最後のミトラが笑顔だったのは確かだし、これはこれで、ということにしておきます。


今回は巻を通じてバトル続きでした。何せいきなり「七の魔人」とか言って、7人もの敵が出てきたもんですから、次から次へと大忙しです。
“愛憎の悪魔”イシュタルによって強化された魔人たちは、それぞれが過去の敵を遥かに越える実力者。
そんな敵を相手に、ばらばらにさせられ、多くの傷を負いながらもなんとか勝ちを拾い、前に進んでいく拓真一派がとても格好いいですね。
特に、玖珂とルナのコンビは素晴らしかった! 思えばひょんなことから行動を共にすることになったふたりですけど、確かに互いを思いやっているんだということが、戦いぶりから伝わってきました。
しかしなんだ、玖珂は本当に癒やしキャラでしたね……。男のツンデレもいいもんです。
思わぬ活躍を見せてくれたのはサヴァトリィ。仲間内では最高の実力者のわりに、これまでは大して凄いところが見られなかっただけに、最後にこうしてしっかり強さを描いてくれたのはよかったと思います。


“叡智の書”、そして“叡智の悪魔”ヴィオレッタから、世界の真実を知った拓真。
正直、いきなり話がデカくなりすぎた感はありますが、一応伏線はあちこちに張られていたようですね。一番大きいものはやっぱり玖珂でしょうか。
ミトラを守るため、ミトラの幸せのために、そして拓真自身の幸せのためにと、拓真が下した決断。結果として、それは功を奏したということになるのでしょう。
最終的に、拓真とミトラは幸せな日常を得ました。私たち読者と、あの男が、それを見届けました。だから、これでいいのだと思います。
個性豊かなキャラクターに彩られ、迫力のバトルに心躍る、楽しい作品でした。次回作も楽しみにしています。


ここに来て玖珂が株を上げすぎて、こいつが主人公だったんじゃないかという説まである。