まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ごはん食べたい! ―なんでもしますから?―

ごはん食べたい! -なんでもしますから?- (GA文庫)

ごはん食べたい! -なんでもしますから?- (GA文庫)

ストーリー
深刻な空腹に悩む貧乏少年・晴斗は、部活勧誘のポスターに釣られて校舎裏のプレハブへと赴く。
しかしそこで出会ったのは、自らを『運命を司る貧乏神』だと称する超ハラペコ少女・小雨だった。
食料を手に入れるため、小雨とともに学内で何でも屋を始める晴斗だったが……。



第5回GA文庫大賞<奨励賞>受賞作品。
あらすじからグルメ系日常ラブコメだと思っていたのに、だいぶ様子が異なりました。軽くあらすじ詐欺なんじゃないかな……。いや、あえて情報を隠しているってことは分かるんですけどね。とにかく、予想外の方向にではありましたが面白かったです。
グルメ系ではありませんでしたが、ラブコメではあるので、そちらでも楽しめます。時折入る妙にするどいツッコミにはくすりとさせられました。
感想を書こうとするとどうしてもネタバレ気味になっちゃうので、避けたい方は以下読まれませぬよう。


自称『貧乏神』の小雨と、自称『妖精女王の末裔』の鈴音。そんな電波な美少女ふたりに挟まれた『一般人』の晴斗。共通点は空腹。
少し妄想が入ってる女の子たちとのごく普通の学園ラブコメ「に見せかけて」という展開の仕方が上手いと思いました。
まあこちらとしては、小雨と鈴音の話が見事に噛み合っていたり、物理的にかなり違和感のある現象が起きたりしている時点で察しがついてしまうわけなんですよね。ああこれはそういうことなんだと。そしてそれが分かると、だんだん晴斗の態度にイラッとさせられてきます。
もっとも読者は小説だからあっさり受け入れられるというだけで、晴斗の勘違いはいたって普通のことなんですけどね。特に彼は両親への反発などもあって、オカルティックなものにはより過敏になっているでしょうし。
そう思ってみると、小雨たちと晴斗との微妙なすれ違いも楽しいではないですか。さすがに鈍感すぎるような気はしますけど。
さんざん焦らされたからこそ、ようやく晴斗が認めるに至ったときは爽快でした。「ざまあみろ」という感じ。
でも、自分が間違っていることが分かったらしっかり反省して謝れるのが、晴斗のいいところですよね。


ブコメ部分では鈴音が可愛かったです。根は優しい高飛車お嬢様に弱いだけです。すみません。
慣れない他人との関わりに戸惑って、顔を赤らめつつも嬉しそうにする彼女の姿にきゅんときてしまいました。
周囲から白い目で見られても鈴音と一緒にいることを決めた晴斗はちょっと格好良かったですね。
鈴音も小雨も基本不憫度が高いので、どちらかを選ぶというよりも、一緒に幸せになってもらいたいものです。晴斗ならそれができるのではないでしょうか。
ひとまず危機は脱したものの、まだまだ困窮していることは確かですし、根本的な問題も解決してません。
次こそは晴斗たちがタンパク質(人間の食べ物で)を口にできるよう祈りつつ、続きを待ちたいと思います。楽しみ。


イラストはめがりす;さん。表紙で白米を手にして笑っている小雨が切ない。作中では一度も口にしていないのに。
アクションシーンのイラストも欲しいですね。


花の蜜ってなんであんなにおいしいんでしょうね。