まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

“朝顔” ヒカルが地球にいたころ……(6)

ストーリー
朝衣との最初の約束を叶えてほしいとヒカルに頼み込まれてしまった是光。
犬猿の仲の朝衣と関わるのは気が進まないながらも、しぶしぶ約束を果たそうとするが、拒絶する朝衣とは喧嘩ばかり。
そうこうしている内に、何故か二人が恋仲だと噂になってしまい……。



満を持しての朝ちゃんのターンです! 見てくださいこの表紙。まさにクールビューティー。凍えそう。
朝ちゃんは物語が始まってからずっと謎に包まれたヒロインでしたし、恐らく誰よりヒカルに近かった人物でもありますし、なんといってもヒカルの死の秘密を知っているであろう数少ないキーパーソン。読む前からお話が大きく動くのだろうという予感がバリバリでしたが、さて、結果はいかに。


出だしから帆夏の可愛さが爆発してました。前巻での彼女の押せ押せムードは凄かったですからね!
巻が変わってさすがに勢いは弱まりましたが、一度踏み込んだ恋、そうやすやすとは引き返せないもの。友人の乱入という予定外の要素がありつつも、順調にニヤニヤイベントをこなしていく帆夏さんなのでした。
女嫌いでずっと通してきた是光の方も、いい加減女の子に慣れてきたこともあって、帆夏のことであれこれ思い悩む姿は「恋わずらいする青少年」そのもの。
帆夏も是光も、えらく不器用なもんですから、なかなか先へ進めそうにはないのですが、このじれったさがたまらなく好きです。体じゅうがこそばゆい!
是光の部屋での、帆夏のひと言の破壊力たるや、もう凄まじいものでした。帆夏さん、それもう完全に言ってる! 言っちゃってるから!
切羽詰まって思わずこんなことばを吐いてしまう帆夏さんが切なすぎるので、もういい加減になんとかしてほしい気持ちもあるのですが、ヒロインとしては葵も同じくらい応援したいというジレンマがここに立ちふさがる。ああ、まったく、なんと心乱される物語でしょうか。


さて、帆夏も帆夏で可愛いのですが、やはり今回のメインは朝ちゃんなのでした。
ヒカルとの幼少期の約束を心に刻みつけて、帝門家を相手に孤独な戦いを繰り広げる朝衣さんは、とても格好良いけれどどこか悲しい。
1巻の頃なんかは、その孤高の生き方が、つんとお高く止まったいけすかなさといった風に見えていました。でも、葵以外誰も寄せ付けないような振る舞いの裏にこんな理由があったのだと思うと、知らず彼女に気持ちを重ねてしまいます。
長年の思いがこじれきって、もうヒカルの他には朝衣の気持ちを変えられないんじゃないかという状態。でもそこで決めてくれるからこそ、是光さんは最高の主人公なのですよね。
相変わらずがさつで、空気も読まず、しっちゃかめっちゃかにかき回すというやり方でしたが、これくらいしなければ、この氷のお姫様の心を動かすことなどできなかったことでしょう。もちろん、この活躍の影には帆夏の助言の力があったわけですけれど。
ヒカルとは全然違うのに、誰よりも上手くヒカルの思いを伝えられる是光には、やはり天性のタラシの才能があるのかもしれませんね。
しかし、なんだ、ラスト付近の朝ちゃんは驚くほど可愛かったです! 朝ちゃんだけは好きになれそうにないと思っていたあの頃の自分を叱りつけたい。
帆夏にも迫る、いや、最終的には帆夏を超える魅力を放っていたかもしれません。いや、単に私がギャップに弱いだけですね。すみません。


あとがきによれば、「この巻から後半戦」とのこと。遂にヒカルの“最愛”についての秘密が明かされようとしています。
作中最初にして最大の謎であるヒカルの秘密とは、いったいどのようなものなのでしょうか。今回出てきたヒントから、なんとなく予想が付きそうな気もしますけれど……?
次巻タイトルは“空蝉”とのこと。ヒカルのことはもちろんですが、是光の恋の行方がどこへ向かうのか気になって仕方ありません。ああ、毎度ながら待ち遠しい! 本っ当に楽しみです!


彼女ができたら河童釣りデートに誘えばいいのか……。