“花散里” ヒカルが地球にいたころ……(8)

“花散里" ヒカルが地球にいたころ……(8) (ファミ通文庫)

ストーリー
母との別れを支えてくれた葵を、妙に意識してしまい動揺する是光。
そんな中、みちるの推薦により文化祭の実行委員に選ばれてしまう。
クラスメイトに避けられながらも準備に奔走する是光だが、頼りの帆夏からもなぜか素っ気ない態度を取られてしまい……。


ぎゃあああああああああああ！　……と思わず叫びだしたくなるような、修羅場続きの第8巻。
もちろんこのシリーズらしい、優しくて微笑ましく、淡く清らかな恋愛描写もあったのですが、それ以上にもう色々なことがショッキングで、文化祭回だからとかそういうことは関係なく頭がお祭り騒ぎでした。こわいよ。女の子こわいよ。
是光さんが無意識にばらまいてきた愛がここにきて牙をむきましたね……。誰が悪いという話ではないので、どうにもならないんですが。強いて言えばヒカルのせいですか。


遂に葵のことを意識しはじめた是光さん。帆夏がいるのに、なんて野暮なことは言えません。これだけ魅力的な女の子たちに囲まれているのですから。
彼女はヒカルの特別です。そのことがあるから、是光は葵に対して、他のどの女の子よりも臆病に（この言葉が適切かどうかはわからないけれど）なっているようでした。
朝ちゃんから図星をさされて、焦って喚き散らしちゃう是光の姿は新鮮。でも、扉の外で起こっていたことを思うと胸が痛い……。朝ちゃんの気持ちも考えるとさらに胸が痛い……。
是光が苦しんでいると思って葵が是光に言い放った台詞もずんと突き刺さったし、それを言った葵の内心を知ってさらに苦しいし、もう話がこじれるところまでこじれてしまって全体的に痛々しすぎる。
帆夏は帆夏で、自分の意地っ張りのせいで是光と親しくすることができなくなってただでさえ辛いのに、葵のことで悩んでいる是光を見るのも辛くて、それでもつい葵の後押しなんてしてしまって、つくづく損な性格というか、本当に優しいのに自分から幸せを掴みに行けないのが、なんともじれったい。
もう、この作品のヒロインは本当にみんなみんな可愛くて、花のように素敵な子たちで、全員に幸せになってもらいたいのに、絶対にそうはならないんだということが改めて明らかにされた気がして、切なくなってしまいました。
そんな中、こういったギスギス展開を尻目に、ひとり悠々と過ごすヒロインは我らがしーこ。彼女が出てくるとそれだけで心がほっと癒やされて、頬がゆるんでしまうので、しーこの可愛さは偉大だなと思いました。


恋愛方面が混沌としていく一方、文化祭では、是光さんがその基本能力の高さを活かして八面六臂の大活躍。
ようやく是光の本当の姿に気付きだしたクラスメイトや学校の人たちが、今までとはちょっと違う目で是光を見るようになったのはとても嬉しいことです。頑張った甲斐があったね。よかったね。
でも、ヒカルの他に是光の良さを知る人が出てきたというのは、なんとなくヒカルと是光の物語が終わりに近づいていることを感じさせます。
そして事実、あとがきにて、この愛しきシリーズも、あと2巻で完結となるということが明らかになりました。淋しい。
エピローグがとんでもない破壊力だったので（ああ、この衝撃をどうことばにすればいいのだろう！）、早く続きが読みたくて仕方ないのですが、読むと終わりが近づいちゃうから読みたくないような、でもやっぱり読みたいような……ううん、読みたい！
ここまできたらもう、矢でも鉄砲でも持ってこいという感じで、どしっと構えて、次巻を待ちたいと思います。超楽しみ。


おまけ掌編の朝ちゃんも卑怯なくらいに可愛かったけれど……それより俊吾兄様、可愛すぎです。