まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ(8)

ストーリー
秋人はメガネコンテストの際の約束通り、銀兵衛とデートに行くことに。
なぜか生徒会メンバーの反対もなく、デートはあっさり承認されてしまう。
銀兵衛との度重なる話し合いの末、本番となる遊園地デートへ赴く秋人だったが……。



表紙からもあらすじからも明らかな銀兵衛のターン。
これまでも書いてきたとおり秋子が可愛すぎて可愛すぎて秋子しかほぼ目に入らない私、前回ラストで銀兵衛があんな暴挙に打って出てきたこともあり、今度ばかりは読み出すのに少々時間がかかりましたが、いざ読んでみたらやっぱり面白かったです。
いや、前半のデートの方は正直どうでもいいっちゃどうでもいい内容(多分銀兵衛派の人には天国)だったんですが、後半の過去話は実に興味深く読めました。


前半のデート回は前巻の続きではなく、夏休みに入る前のお話。
感想をひと言で述べるならば、「こいつら超面倒くさい!」でしょうか。
銀兵衛はですね、まあ、可愛いとは思うんですよね。秋人のちょっとした不意打ちに顔を真っ赤にしてしまうところとか、どうしても素直になれなくて、でもそれを後になってから悔やんじゃうところとか、結構好きではあるんですよ。
でもその長所を補って余りあるのがこの面倒くささです。基本的にヒロイン全員が面倒くさい作品ではありますが、その中でも群を抜いてます。
なんと言ってもこの長ったらしい語り口調のくどさ。銀兵衛だけならまだしも、こと口論となると秋人も同じくらいくどくなるものだから、こりゃもう手がつけられない。
クレープをおごるのおごらないのでそんなモメなくてもいいじゃないですか。秋人と銀兵衛は親友なだけあって、お互いに引くということを知らないのではないかと思います。そういう意味では、銀兵衛も確かに、秋人にとっての特別なのかもしれません。もちろん秋子は別格ですが!


後半は秋人と銀兵衛の出会いのお話。なんと小学生時代。
いやはや、ふたりとも、今とはずいぶんキャラが違いますね。銀兵衛はなんとなく、秋人に出会っていなかったらこうなっていたんだろうなあ、というあたりのキャラではありますが、秋人の方は丸っきり別人のようです。簡潔に言って才能に溢れた感じ。
今でこそ変人たちに囲まれた結果凡人のように見えてしまっている秋人ですが、思えば家のしがらみから抜け出し、秋子を取り戻して独り立ちしてみせたのは他ならぬ彼であるわけで、そんな彼がそれなりの傑物なのだということは、最初から分かっていたことなんですよね。つい忘れがちになりますけれども。
銀兵衛も、デートでのデレデレぶりと比べると……いやはや、ずいぶんと丸くなったものです。
とことんツンな銀兵衛(小学生)と、とことんしつこく迫る秋人(小学生)。意外なことに、今のふたりからは想像もつかない険悪な関係だったのですね。
でもこれで、秋人と銀兵衛があれだけ「親友」を意識する理由が明らかになりました。そりゃあ、これだけのイベントをこなしたら、絆も深まるというものです。秋人の粘り勝ちですね。もちろん、その固い関係が、今の銀兵衛にとっては足かせとなってしまっているわけですが……。


今回は秋人と銀兵衛の過去編でした。他に気になる過去といえば、秋人と秋子の過去、秋人とありさの過去あたりが挙げられますね。
特にやはり、秋人と秋子については、生き別れる前のことや、秋子を取り戻すときのことなど、もし描かれるとなったら、物語の根幹に大きく関わる内容になってきそうです。
ストーリーはぜひどんどん進めていただきたいけれど、たまにはこんな過去話を挟んで、キャラを掘り下げていってくれると、さらに楽しみが深まりますね。
次はいよいよ7巻からの続きです。あのラストから、銀兵衛がどんなアクションを取ってくるのか、秋子の反撃はあるのか、他のヒロインにもまだチャンスは残っているのか、期待と不安とに揉まれつつ、首を長くして待ちたいと思います。


アナスタシアと銀兵衛の百合エンド。私はまだ諦めません。