まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

マグダラで眠れⅡ

マグダラで眠れII (電撃文庫)

マグダラで眠れII (電撃文庫)

ストーリー
異教徒最大の鉱山の町カザンに、近々入植があると気付いたクースラとウェランド。
それは、工房のある町グルベッティが戦争の最前線ではなくなることを意味していた。
二人はなんとかカザン入植の波に乗るべく、手柄を立てようと画策するが……。



表紙のイラストでフェネシスさんのキュートなお耳がしっかり出ちゃってるんですが、1巻未読の人にはずいぶんなネタバレですよねこれ、という第2弾。
いや、まあ、パッと見ならちょっと奇抜な髪型に見えなくもない……のか……? ピンナップまで見ちゃったらもう完全アウトですが。
もしもこれから読もうかと迷っている人を目にしたら、そっと1巻だけを差し出してあげることにしましょう。それが優しさというものです。


2巻目にして早くも安定感抜群の、クースラとフェネシスの会話劇。
物知りで頭も回り、からかいながらも世間のことや錬金のことを教えていこうとするクースラに、右も左も分からないフェネシスが必死になって食らいつこうとする姿が、健気で本当に可愛らしい。傍からはどう見ても、悪い男に純粋な少女が騙されている構図ですけれどね。
しかしクースラは教師としては存外に真面目なようで、フェネシスがこれから生きていくために必要なものをきちんと見つめ、そこに対しての助言なり示唆なりを与えています。
言い回しは易しくないし、やり方だって優しさばかりではないけれど、かといって突き放すこともなく、からかったままで終わるわけでもない。直接ことばにしている場面こそ少ないものの、フェネシスのことを大切に思っているのだということが、ほんのり伝わってきました。
またフェネシスがいい生徒なんですよねえ。クースラに怒ったりむくれたりしても、そのことばにはしっかり耳を傾けるし、学びとるところは学びとろうとしている。
根っからの頑張り屋さんなんでしょうね。こういう子は応援したくなるものです。思わず頭を撫でてしまいたくなりますが、クースラはよく自制心が保てますね。


ダマスカス鋼の秘密を求めてイリーネと渡り合うクースラ。こちらのクースラはもう完全に「悪い男」モードでした。これを悪い男と呼ばずになんと呼ぶか。
でも、こういう“錬金術師っぽい”ところにこそ、クースラの魅力が溢れているようにも思えます。今までも、こうやって何十人もの人を泣かせてきたのでしょうね。なんという女泣かせ(文字通りの意味で)。しかし、なんだ、イリーネさんもなかなかに可愛いな。
一方、老獪な職人ソペイテスとの話し合いは、分かっている者同士の油断できないやりとりといった風で、これまた実に格好良かったです。
散々他人をやり込めてきたであろクースラでも、年の功にはなかなか勝てぬということで。


何でも知っているようなクースラにも気付けないことがあって、何にも知らないようなフェネシスだからこそ気付けることもある。そんなお話でした。
クースラとフェネシスの関係もまた少し進んだのでしょうか? まあ、焦らず急がず、ゆっくり歩んでいってくれたらと思います。
なんてったって、一挙一動のたびに頬を染めるフェネシスは最高に愛らしいですからね。そんな簡単にくっつかれても困るというものですよ。
次はいよいよ新天地へ、ということでいいのかな。今までとはまた異なる環境で、一同にどんな変化が訪れるのか、とても楽しみです。


横向きのイリーネのイラストはなかなかに破壊力が高いですね。主に身体のある部分が。