まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

最近の妹ブームはどうやら俺のおかげらしいですよ

最近の妹ブームはどうやら俺のおかげらしいですよ (一迅社文庫)

最近の妹ブームはどうやら俺のおかげらしいですよ (一迅社文庫)

ストーリー
妹の美帆と二人で暮らす高校生・今野瑛人は、深夜の公園でユアナと名乗る美少女と出会う。
異世界《混迷する感情の果て》からやってきた彼女は、妹学校なる学校に通っているらしい。
立派な妹になるための特訓と称し、瑛人の家へ押しかけてきたユアナだったが……。



思わず「ほんまかいな」と突っ込みを入れたくなってしまうタイトル。またずいぶんと大きく出てきたものですね! いや、「俺」というのは作者じゃなくて主人公のことなんでしょうけれども。
ジャンルは妹もの、で、いいんでしょうか? 実妹でも義妹でもなく、突然押しかけてきた美少女がいきなり妹にしてくれと言ってきたところで、果たしてそれが妹ものになるのかどうか、私にはよく分からないのですが。
妹ものに見せかけた普通の押しかけヒロインもののような気もしないでもないんですよね。このあたりは有識者会議にでも回しておきますか。
ジャンルがどうかはともかくとして、「妹」をネタとして扱っていることは確かです。
妹としては落ちこぼれなユアナが、少しずつ甘えん坊妹としてのスキルを磨いて、少しずつ妹らしさをつかんでいく……のですが、だんだん自分で書いてて何言ってるんだか分からなくなってきました。妹ってなんなんだよ!


何より設定がユニークですよね。そして無駄に散りばめられてる。
まず異世界の妹学校って。なんですかこれは。冷静に考えると凄い響きですね……。
妹を養成するまではいいとして、その後卒業していった立派な妹たちは、いったいどんな職業に就いていくのでしょうか。そのあたりの説明がまるっとカットされているので、妄想をふくらませるしかないわけですが。
それから、瑛人の“妹・姉ブームを左右する”力。この力も何やら、因縁深いものを持っていそうなのに、その力があるということだけ明かされて終わりでした。
せいぜいがライトノベルレーベルの妹ものと姉ものの比率を動かすくらいですか? いやいやもっとこう、何かあるでしょう!
こういった、設定の使い捨てみたいなことが多々見られました。せっかく面白い設定なのですから、もうちょっと掘り下げてほしかったかなあと思います。
まあ、メインであるヒロインとのいちゃいちゃに、ちょっと味付けをするためだけに設定を使い捨てていくというのも、それはそれで割り切っていて結構好きなんですけどね。


ヒロインは3人登場。一番可愛いのは順当にいってユアナだと思うんですが、一番キャラが立っていたのは美帆でしょうね。
ブラコン妹ってなんでこう、エロス的な意味で積極的になってしまうんでしょうか。けしからん。もっとやれ。
ユアナは、普通にしているだけで十分に可愛いと思うんですけど、そこに妹特訓の要素が加わって、そのたどたどしさが何とも言えず……悪くない!
美帆とユアナの関係の変化は良かったですね。初めは刺々しかった美帆が、時間が進むにつれてユアナのことを心配したり、じゃれ合ったりするようになっていって、微笑ましい気分になりました。
そういえば、ライバルキャラとして登場してきたマオも、敵対しつつもユアナを教え導いているような気配がありましたね。
なんだかんだでみんなから愛されているユアナは、実は高い妹適正を持っているのかもしれません。


妹キャラ、姉キャラがヒロインとなったとき、最大の問題となるのが恋愛のこと。それに対して、ある解答を導き出す瑛人。
是非はわきにおいといて、恋する妹が可愛いことは間違いないことだと思います。
実の妹と、新しい妹(?)と、新しい姉(?)に囲まれて、瑛人がこれからどんな選択をしていくのか。楽しみですね。


イラストは生煮えさん。バストの描き方にこだわりがあるのかなと思わせるイラストの数々でした。
ああ、だから美帆のイラストが少なかったのですね(ひどい)。


《混迷する感情の果て》で「シスタ・シスタ」と読ませるセンスには脱帽。