まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

織田信奈の野望4

織田信奈の野望 4 (GA文庫)

織田信奈の野望 4 (GA文庫)

ストーリー
同盟関係にあったはずの浅井家の裏切りにより窮地に立たされた織田軍。
自らしんがりに名乗りを上げた良晴に後を託し、悲しみを耐えながら、信奈は京への道をひた走る。
難所・朽木谷へと入った信奈は、朽木城との交渉役として松永久秀を差し向けるが……。



前巻ラストがこれ以上ない盛り上がりのところで続いてくれたので、読む前から心臓バクバクさせながらページをめくりました。
いやあ、面白かった。今までの中でも特に多くのキャラの活躍が見られて良かったです。
戦国時代をそのままモデルにしている以上、キャラが増えてしまうのはどうしようもないことなんでしょうけれど、せっかく出てきたのだからやっぱりそれなりの見せ場があってほしいもの。出てきてあとは空気じゃ寂しいですからね。
そういった見せ場は、やっぱり勝ち戦以上に、負け戦のときにこそたくさん出てくるものだと思うんですね。
今までの戦いでは、それなりのピンチもありつつも、やはり最後にはうまくいくんだろうなという、一種のお気楽さがあったように感じるのですが、今度ばかりはそうではありません。ずっと緊張感が張り詰めていて、手に汗を握りました。
生きるか死ぬかといった極限状態で、織田軍の精鋭たちが見せる本気の戦い。熱い。


しんがりとして逃げる良晴たち。自ら決死隊に志願した500人。
良晴を再び信奈に会わせるために命を賭けよう、そして捨てようとさえする彼らの強い思いには、胸を打たれました。
しかしそんなときでも、我らが良晴さんは、みんなで生き延びて帰ろうと言うわけです。現代に住む高校生としては当たり前かもしれませんが、戦国の世では異端の考えなのだろうと思います。
そして、そう言ったからには、彼は本気でみんなを生かしたまま逃げ切ろうとするのですね。これはなかなか、一介の高校生にできることではありません。部将としては零点かもしれませんが、主人公としては満点をあげたい。
一方、そんな良晴を危地に置いて、ひたすらに逃げる信奈。
その胸を占めるのは後悔でしょうか、悲しみでしょうか。ただただ、サルのことを想い続けて、でも助けに行くこともできなくて、気持ちを押し込めておくことしかできない信奈は、実に痛々しい。
あの強い強い信奈が、夢の中に逃げ込んでしまうくらいに悲しんでいるのだと思うと、こちらまで切なくなってしまいます。
彼女の中での良晴の存在は、いつの間にか、それだけ大きなものになっていたのですね。


またしても十兵衛ちゃんがやってくれました! いやあ、十兵衛は本当にできる子だなあ!
本格的に出てきたのは前巻からだというのに、もはや良晴と並んで主人公やってるんじゃないかっていうくらいの活躍ぶり。自他共に認める天才はやはり違いますね。
戦いもそうですが、やっぱり彼女の強さは意志の強さ。一度決めたら絶対にやってやるというその思いが、これだけのことをやってのけてみせるのでしょう。とても格好良かったです。
あ、サービスシーン方面でも素敵でした。ごちそうさまです。いやはやこれは、信奈のメインヒロインの座も危ないかもしれませんね……!
十兵衛ちゃんの次は半兵衛ちゃん。せっかく仲間になったというのに、これまでどうも地味だったので、彼女の出番は嬉しい限り。
陰陽師としての半兵衛ちゃんオンステージでしたね。小さい体での余裕の勝利に痺れました。
今後はぜひ、軍師としての半兵衛ちゃんの活躍も見てみたいところです。


勝家、長秀、犬千代といった武将たちはもとより、ねねや道三、そして義元に至るまで、それぞれの良さが存分に出ているお話でした。
ひとまずの窮地は脱したものの、天下統一はまだまだ先。信奈の前に立ちはだかるのはあの最強軍団。
相変わらず歴史に疎くて、次にどんな戦いが待ち受けているのかは知らないのですが、信奈と良晴を初めとしたキャラたちの獅子奮迅の戦いを期待したいと思います。次もできるだけ早く読んでしまいたいですね。


朝倉義景……色んな意味で恐ろしい男だ……。