まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

竜と勇者と可愛げのない私

竜と勇者と可愛げのない私 (電撃文庫)

竜と勇者と可愛げのない私 (電撃文庫)

  • ストーリー

優秀な能力を持ちながらも、平民というだけで周囲から疎まれる王宮魔術士のアンジュ。
ある日、信頼する英雄・レイヴェンに呼び出された彼女は、ある任務を与えられる。
その任務とは、ヘタレな剣士・レックスと共に魔王を退治することだった……。


魔法使いの少女・アンジュと剣士の少年・レックスのデコボココンビが、魔王打倒の旅に出る物語。
アンジュの丁寧語一人称で描かれる文章はとても読みやすく、すらすらと読めました。
異世界ファンタジーだけれど設定も軽めだし、気軽に楽しめる作品だと思います。


アンジュは平民ながら魔法に秀で、国で唯一の平民出身王宮魔術士の少女です。
その生まれから、周りの貴族たちに蔑まれ、憎まれ、すっかり貴族嫌いで人間嫌いになってしまっています。
一方のレックスは優れた剣の腕を持ちながら血が苦手で戦いを嫌う、心優しい少年。
戦うくらいなら謝るか逃げるか話し合うか、という、勇者にはあまり相応しくないヘタレっぷりです。
頑張り屋のアンジュと、やる気のないレックス。相性は決していいとは言えない2人ですが、行動を共にすることで、少しずつ距離が縮まっていきます。
他人の優しさを忘れかけていたアンジュが、王宮魔術士になってから初めてレックスの優しさに触れて、次第に心を開いていく様子にきゅんとしました。
それにしてもアンジュは可愛いですね。可愛げのないところが可愛いんだ。
ひどく意地っ張りで、お礼の言葉さえ面と向かって言うことができない。そんな素直じゃないところがなんともいえず愛らしいです。
レックスは、まあいい奴なんですけど、女の子に戦いをまかせて逃げまわるっていうのはヒーローとしてどうなんだろう。
ただ、それほど戦いを嫌っているのにも関わらず、大事な時には強大な敵に立ち向かう強さも持っていて、そんなところは格好良いと思わないでもない。
アンジュ視点だからなのでしょうか、レックスはどうも掴みどころのない、よく分からないキャラに見えますね。
これからさらに2人が分かり合っていけば、また違った面が見られることと思います。


とある秘密を持ったメイド・トモエ、凄腕の殺し屋・アイカ、英雄・レイヴェンなど、魅力的なサブキャラ陣。
個人的にはトモエ一押しですね。ナギナタを振るって敵を蹴散らすメイドってなにこれ素敵。
レイヴェンは一見完全無欠っぽいですけど、どうも裏がありそうに思えてしょうがない。うがち過ぎですかね。
気になったのは、ちょっと唐突で都合のいい展開が多かったところと、剣と魔法のファンタジーにしてはバトルがあっさりしていたところ。
軽いお話は大好きですけど、もうちょっと重厚なところがあってもいいのかなと思いました。まあまだ1巻ということもあるし、これからに期待。
次はどのような試練が待ち受けているのか、そしてアンジュとレックスの関係はどうなっていくのか。ううん、気になる。


イラストはぎん太さん。そばかすヒロインも悪くないなあ! ほっぺの色づき方が好きです。
ドラゴンのビジュアルも印象的でした。