まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ

  • ストーリー

ふたつの名家にそれぞれ預けられ、6年間離ればなれになっていた双子の兄妹、秋人と秋子。
秋人はこの春、思い切って兄妹ふたりきりでの引っ越しを決行した。
ところが久しぶりに同居することになった妹は、超がつくほどのブラコンで……。


秋子の突き抜けたブラコンっぷりが気持ちいい。
本当にいたら引いてしまうような言動ばかり取っている彼女ですが、方向性がずれているだけで、いわゆる兄妹愛からはそれほど大きく外れていない気がします。
いや、秋人への性的な欲求みたいなものは本当にあるのかもしれませんけど、それ以上に秋人とじゃれ合うこと自体を楽しんでいるような。
兄に迫っているけれど、それも抱っことかキス程度だし、可愛いものではないですか。いや、この年になってキスはいかんだろうけど。
秋子の兄への愛は、その辺に転がっている愛よりもよっぽど純粋で、混じりけのない、まっすぐな愛情であると思うのです。


そんな秋子の兄である秋人ですが、普通のように見えて実はシスコンの気があるんじゃないでしょうか。
彼女と妹だったら妹の方を取りそうですよねこの人。異性としてではないけど、なんだかんだで秋子のこと大好きだし。
この兄妹の間に別の女の子が入るのは、予想以上に難しいことなのかもしれません。
他にも、謎めいた女の子・アナスタシアや電話の向こうの親友・銀兵衛など、ユニークながら魅力あるサブキャラたちが登場します。
ただ、生徒会長の二階堂嵐だけはよく分からない。どうしても眼帯と刀じゃないと駄目だったのかな。どうも無理があるキャラ付けのように思えます。


ひとつ気になったのは文体です。主に地の文でのことなのですが、読点を入れて欲しいところに句点を打って文を終わらせてしまっているんですよね。
特に「〜で。」「〜けど。」で終わっている文がかなり多かったと思います。
この作品だけではなく、鈴木先生の他の作品でも、このような文体であるようです。
時々使われる分には構わないのですが、これだけ多用されるとどうも、読んでいてつっかかりを感じてしまう。
会話文のテンポがいいだけにもったいないですね。もっとも、全然気にならない人もいるのでしょうけど、こればっかりは相性だからなあ。


最後の最後に大きな爆弾を仕掛けていってくれました。
これはまた、この先どうなっていくのか実に楽しみです。


イラストは閏月戈さん。どのイラストも素晴らしかったです。
まつ毛の描き方が特徴的なせいか、独特の色気がありますね。