まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

薔薇のマリア Ⅴ.SEASIDE BLOODEDGE

薔薇のマリア 5.SEASIDE BLOODEDGE (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリア 5.SEASIDE BLOODEDGE (角川スニーカー文庫)

  • ストーリー

サンランド無統治王国の海沿いに位置する街・ジェードリ。
トマトクンの旧友・ジョーカーから手紙が届いたことがきっかけで、ZOOの一行はエルデンから海の街へと旅立つことに。
その頃ジェードリでは、街を支配するマフィアと教団の間で戦いが巻き起ころうとしていた……。


公式のあらすじとは裏腹に、ZOOがほとんど登場しない巻でした。
かなり変わった作りになっていて、20に分かれた各章をそれぞれ違う登場人物の視点で描き出しています。
しかしこの登場人物はほぼ初登場のキャラばかりで、舞台は慣れ親しんだエルデンではなく、見知らぬ街ジェードリ。
この巻だけ見るとまるで別の作品であるかのようです。
ZOOが登場するのはほんの少しだけ。それも物語の中心ではなく、活躍もしません。
活躍とは関係なくサフィニアがめちゃくちゃ可愛かったりするのですがそれはそれとして、いつものメンバーがいないとやっぱり話に乗り切れないところがあります。
しかし別の作品みたいなものだと思って読めば、これはこれで楽しい。
エルデンではない街で起こった騒動をあらゆる視点から眺めるのはなかなか興味深かったです。
これだけのキャラを新たに登場させ、それぞれの苦悩や生き様を余さず描こうとするその冒険心には驚かされますね。


物語の中心はジェードリの貧民街を支配するマフィア、パンカロ・ファミリーと、ジェードリで暮らすとある孤児たち。
マフィアが仕切っていたことでそれなりの平和を保っていたこの街に、異国からやってきた教団がもたらした危機。
今まで守ってきたものが失われていく恐怖、そして復讐。
パンカロ・ファミリーはあの《秩序の番人》を彷彿とさせますね。
偉大な首領とそれに付き従う忠実な兄弟たちが戦いにおもむくさまには、マフィアなりの、騎士団にも通じる誇りが感じ取れます。
特に普段は仲の悪い息子たちが共に立ち上がって敵に向かう様子には胸が熱くなりました。
そしてファミリーの一員ではないけれど、ジョーカーが卑怯なくらい格好良かった。なんなんですかこの人は。


今回で舞台が整えられたので、次で満を持してのZOOの登場ということなのでしょう。
ここに我らがヒーロー達が加わることで、どんな化学反応を起こしてくれるのか。とても楽しみです。