まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

薔薇のマリア Ver2 この歌よ届けとばかりに僕らは歌っていた

  • ストーリー

様々な冒険を経て結束を強くしてきたクランZOO。
しかしクランの一員として出会う前、メンバーは何を見て、何を感じていたのか。
ZOOがまだZOOでないころ、彼らはひとりで悩み、恋し、涙していた……。



トマトクン、ピンパーネル、カタリ、マリアの過去を描いた短編集。
ZOOのメンバーはとにかく謎だらけですから、ZOOに加わる前の姿を少しでも見ることができるのは楽しいですね。


しかしトマトクンは相変わらずというか、全体的に謎ばかりでよく分からない。
今回も分かったような分からなかったような、微妙なところです。
トマトクンの物語というよりは、ゲストで登場するとある魔術士の物語として見た方が素直に読めると思います。
髭をはじめとしてどこかで聞いた名前もちょこちょこ登場するのでそのあたりにも注目。


ピンパーネルの話はとにかく暗い。一流の暗殺者だったのだから当たり前ですけど。
ある女性のために闇の中で生き抜いてきたピンパーネル。
彼の歪んだ心がどのようにして作られてきたのか、おぞましく思いながらも興味深く読みました。
胸が痛む話ではありますが、色々な形の愛が溢れている話でもあるのかもしれません。


カタリの話は一番良かったですね。
舞台はエルデンで、偶然出会った少女にカタリが恋をします。
カタリがこんなに格好良く見えるなんて思ってもみませんでした。本当にいいやつだなあこの男は。
切なくてほろ苦い素敵な片思いの物語だったと思います。いつかカタリに幸せあれ。


マリアの話は子爵から逃れてエルデンに来るまでの間の物語。
Ver1の頃の孤独に生きることしか知らないマリアの姿が思い出されて、なんとなく懐かしい気分になりました。
表紙にも描かれているけれど、メイド服が似合い過ぎていて困る。
それにしても性別は結局どちらなのでしょうか……。


予想通りというかなんというか、どの話もそれほど幸福な結末ではなかったかもしれませんが、この過去があるからこそ今のZOOがあるんですよね。
サフィニアやユリカの過去も気になります。いつか描かれることがあるのでしょうか。