まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)

  • ストーリー

私立伯東高校の二年四組は、問題児ばかりで構成されている。
クラスのボスである委員長は強権を発動し「皆の心をひとつにする」ために交換日記を開始した。
誰が書いているのか分からないよう工夫された日記の中で、予想外の事件や恋が描かれていく……。


第9回スーパーダッシュ小説新人賞<佳作>受賞作品。
これはまた、もの凄い作品に出会ってしまったような気がする。


ストーリーは全て交換日記の中で進むのですが、この日記がくせ者で、クラスメイトの名前は各々の特徴を表した異名で書かれ、ところどころが塗りつぶされ、書いているのが誰かが分からないようになっています。
読者は少しづつ明かされていくヒントを元に、どの異名が誰を表すのかを、パズルの要領で探り当てなければなりません。
読む前こそ面倒くさいと感じるかもしれませんが、これが存外に面白く、気付くとクラス名簿の欄を埋めることに熱中していました。
ちょっとした目立たないヒントをつなげて答えが出てきたときなどは特に嬉しかったですね。
イラストの助けもあって予想よりはあっさり解けてしまいましたが、ストーリーがあることを考えるとこれくらいでちょうどいいのかとも思います。
また、表が完成してから読み進めると、辻褄がきちんと合っていたり前の伏線に気付けたりして、なんとも言えぬ達成感が味わえました。


ストーリーはクラス内の派閥やメンバーの説明から始まり、クラスのイベントやちょっとしたいざこざへ発展。
恋の話などを挟みつつどんどん話が大きくなっていき、いつの間にかある事件へとなだれ込んでいきます。
事件が解決に向かうに従って次々に謎が解き明かされ、伏線が解消されていく様子は実に快感でした。
もちろんそれも名簿ができているからこその快感で、気付いたときには思わずニヤリ。
ああ、楽しくてたまらない。


細かい人間関係も魅力のひとつですね。
誰と誰の仲が良くて誰といがみ合っているのか。
誰かが誰かに恋をしているのだけれど、その人にさらに片思いをしているのが誰なのか。
今のクラスでの関係だけに留まらず、学校外の人や小学校時代なども含めて複雑に絡み合った関係が、35人もいるキャラ達に奥深さを与えてくれました。
特に恋愛に関しては色々な人の思惑が入り交じっていてとても楽しいですね。


事件の結末も爽快でしたが、オチが素晴らしかったです。
言ってしまえば、最後の黒塗りの名前が誰なのか。やられたなあ! という気分になりました。
今回で名簿が埋まってしまったため、同じようなパズルを仕込むのは難しいと思いますが、交換日記を利用したストーリー展開だけでも十分読み応えがあるので、続編があるならば期待したいところです。


イラストは庭さん。なんと言っても、35人全員を描き切ったその労力に乾杯。
どのイラストにも安心感があってとても良かったと思います。


ちなみに僕の場合、202ページで名簿を完成させられました。もうちょっと早くできた気もする。
公式ホームページで名簿がダウンロードできるので、読むときには利用することをお勧めします。