まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ライトノベルの神さま

ライトノベルの神さま (集英社スーパーダッシュ文庫)

ライトノベルの神さま (集英社スーパーダッシュ文庫)

  • ストーリー

大学生になったばかりの青葉浩介が目を覚ますと、部屋に女の子が立っていた。
女の子はライトノベルの神さま・栞で、浩介に「ライトノベルな恋をさせてやる」ことが目的だという。
思わず頷きを返してしまう浩介だったが……?


第9回スーパーダッシュ小説新人賞<佳作>受賞作品。
基本的にはラブコメなんでしょうけど、切ない作品でした。


ライトノベルの神さまが突然やってきて恋をさせてくれる。
よくある妄想みたいなシチュエーションですが、残念なことにこの神さま、特殊な力を持っているわけでもなくほとんど全部が浩介まかせ。
しかも「ライトノベルっぽさ」を出すために、お約束イベントやテンプレ要素を加えていこうとするのでしっちゃかめっちゃかに。
ライトノベルのお約束を散りばめることで逆にユニークに見せているところが面白いですね。


ヒロインは栞と、浩介のバイト先に後輩として入ってきた幼なじみの篠島佳枝。
初めは佳枝と浩介をくっつけようとするのですが、次第に栞も……? というお約束展開です。
この2人の間で浩介が右往左往、最終的にどちらを選ぶのかが主な焦点として描かれています。
神さまとしてのしがらみなども絡んで、話は意外なほどシリアスな方面に転がって行きました。
特に片方のヒロインの視点で見るとなんとも淋しく切なく、最後のあたりなどは遠い世界のお話のように感じました。
うーん、胸が痛みます。可愛い子なのになあ。


バイト先である書店の店長・御山春香やそのコスプレ仲間など、サブキャラも登場するのですが、あまり魅力が感じられません。
特に春香は恋模様を近くで見つつ手助けをしてくれる重要なキャラなんですけど、やり方が浅いというか、不自然な方法をあえて選んでいるのかという違和感があります。
栞の存在もあっさり認めてしまったし、もうちょっと現実味があってもいいのではないかと思いました。
それ以外のストーリー上でも、要所要所で説明が少しづつ欠けていたような気がします。
そのせいか時々ちょっとした疑問点が浮かんで読む際のストレスになっていました。本当にちょっとしたものなんですけれど。


オチも、まあそうなるだろうなあという感じであまり真新しさがありませんでした。
お約束だからとわり切れるかどうかは読む側の好みの問題かな。
続きがあるのなら不足気味だったニヤニヤラブコメ展開に期待したいです。


イラストは羽々キロさん。ふわふわで柔らかい女の子のイラストがとても素敵です。