まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

薔薇のマリア Ver1 つぼみのコロナ

薔薇のマリアVer1 つぼみのコロナ (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリアVer1 つぼみのコロナ (角川スニーカー文庫)

  • ストーリー

とある理由から故郷を追われた少年剣士・レニィ。
隊商の護衛としてエルデンを目指す旅の途中で、鬼人の群れに襲われてしまう。
とっさにレニィは、鬼人たちに追われていた少女を助ける。へっぽこ魔術士・コロナとの出会いであった……。


コロナとレニィが主人公のスピンオフストーリーです。
ちょいちょい思わせぶりに登場するくせになかなか話に絡んでこないと思ったら、単体で話ができていたんですね。


本編の方は暗めの展開が続いているけれどこの2人の物語なら少しは明るいだろう、とたかをくくって読み始めたところ見事に裏切られました。
あっけらかんとしているように見えたコロナにも色々あったんだなあ。
エルデンのような街に来ているんだから当たり前なのかもしれませんけど、コロナは単純にドジをかまして場を和やかにしてくれるキャラだと思っていただけに衝撃的でした。
できそこないの魔術士であるコロナ。自分の駄目っぷりが嫌で、誰からも愛想を尽かされてしまうのではないかと常に怯えています。
それは奇しくも本編のマリアローズと同じような悩み。心の傷はそれ以上に深いのかもしれません。


そんな彼女の前に現れるのがレニィ。
レニィはレニィで暗い過去を抱えているのですが、それでも彼はコロナを支えようとします。
なんだかんだと愚痴をこぼしつつも、コロナと一緒にいること、ともに生きることを選びます。
信じていたものに裏切られて孤独に打ちひしがれていたコロナにとっては想像もできないことだったでしょう。
悔しいけれど格好良いですね。


レニィもコロナも、ZOOのメンバーに比べると見栄えのするキャラではありません。
しかし、弱い者が互いに補い合ってなんとか生き抜いていく姿というのもまたいいものです。
主人公のようなキャラではなく、こういう人たちこそがこの世界を作っているのだということを実感させられます。
この2人ならきっと大丈夫。
まだ出会ったばかりだけれど、こんなにも強い絆で結ばれているのだから。