まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

薔薇のマリア Ⅱ.壊れそうなきみを胸に抱いて

薔薇のマリア〈2〉壊れそうなきみを胸に抱いて (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリア〈2〉壊れそうなきみを胸に抱いて (角川スニーカー文庫)

  • ストーリー

街で買い物をしていたマリアは、男たちが露店を襲っているのを見かける。
誰もが遠巻きに見ているだけという状況で、ただ1人進み出ていった少女がいた。
少女の名はベアトリーチェ。クラン秩序の番人に属する若き剣士であった……。


今回の舞台はエルデンの街中。人間同士の戦いがメインです。
街中とはいえ、ダンジョンに全く引けを取らない恐ろしさ、そしてダンジョンを遥かに超える醜さがありました。
敵がとことん凶悪に、そして卑劣に描かれています。
それも敵がモンスターではなく人間だからなのだと思うとどうにも切なくなってしまいます。


対照的なのはもちろん、クランZOOのメンバーです。
こんなやさぐれた街でも、まだまだ人間捨てたものじゃないと思わせてくれるのは、光り輝く彼らの絆。
誰も巻き込むまいとマリアが1人で戦おうとしているのに、「当たり前のように」共に戦うことを選ぶメンバーたち。
いっそずるいとさえ思えるBUNBUNさんのイラストの効果もあって、ぐっとくるものがありました。
また、大クランを動かすためのマリアとユリカの演説が素晴らしい。
理屈とか関係なしに動くべきときがあるんだ。読んでいて胸のすく思いがしました。
ベタな展開かもしれませんけど、だからこそ心を熱く焦がしてくれるものです。


出番はさほど多くありませんが、第2の主人公とも言える存在感を出しつつあるのがアジアンです。
仲間を守るために嫌われ役を一手に引き受け、愛する者を影で支えるアジアン。
彼が自身の幸せを得るときは来るのでしょうか。そう願いたい。


初めから感じていましたが、この作品は名前のセンスが独特ですね。
敵クラン・SmCの頭領はSIXという名前ですが、たった3文字の名前に何ともいえない怖気を感じます。
ファンタジーには珍しいアルファベットを用いることでそんな効果を出しているのでしょう。上手いなあ。


どんどん読みやすく、そして面白くなってきたように思います。
決してハッピーエンドばかりではありませんけど、この物語の行き先をしっかりと見ていきたいですね。