まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

とある飛空士への恋歌4

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)

  • ストーリー

級友の死に嘆き悲しむカドケス高等学校飛空科の生徒たち。
湖畔で泣いていたカルエルは、思いがけずクレアとの再会を果たす。
クレアへの思いと自分の正体を打ち明けるカルエルだったが、クレアからは別れを告げられてしまう……。


圧巻。その一言に尽きます。
3巻が素晴らしかったので出る前からかなりの期待をしていたのですが、それをいともあっさり超えてくれました。


やはりなんといっても、空戦の描写が凄まじい。
死と隣り合わせの戦場。その禍々しさ、恐ろしさが確かな緊迫感と臨場感をもって押し寄せてきます。
その一方で空や聖泉をはじめとした情景はあまりに美しく、戦争の醜さをより際立たせている。
その戦争の情景でさえ美しく感じられてしまうのが残酷。その裏では何百何千人という人が亡くなっているというのに。
全天に散らばる爆発や閃光、噴煙がこの目に見えるようです。


友の犠牲があり、戦争と死が身近なものとなりました。深い悲しみと絶望が重くのしかかります。
出撃命令が下ったときには全員逃げてくれと思わずにはいられませんでした。これ以上登場人物がいなくなるのには耐えられそうにありません。
それでも戦う少年たち。あるいは己の矜持のために。あるいは愛する人を守るために。
間違った決断だと思いました。でも、悔しいけれど格好良かった。そしてそんな彼らが悲しかった。
彼らは空を飛びます。残してきた友との再会を心に誓って。


そんな中、カルエルとクレアはまた違った思いを抱いて戦場に出ていました。
愛する人が母の仇だと知ったカルエルの苦しみはどれほどのものだったのでしょう。
愛する人から憎まれるクレアの悲しみはどれほどのものだったのでしょう。
憎むカルエル、逃げるクレア。しかしカルエルが憎しみを乗り越え、2人が心を通わせたとき、奇跡は起こります。
これが「恋歌」か。ああ、なんて壮絶な恋なんだろう。


他のキャラも負けてはいません。
ノリアキとベンジャミン、そしてイグナシオ。ちくしょう、格好良いなあ。
アリエルもチハルもナナコもシャロンも先生も。誰もがそれぞれのところで、自分にできる戦いを繰り広げていました。
カルエルだけがヒーローなのではない。みんなが主役なんだ。そう思います。


今回も大変気になる終わり方でした。
次で最終巻。この物語がどのような結末を迎えるのか、今から楽しみでなりません。