まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

空色パンデミック(3)

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)

空色パンデミック3 (ファミ通文庫)

  • ストーリー

《教会物語》の騒動から1ヶ月ほどが経ち、景は結衣のいない学校生活に慣れつつあった。
そんなある日、景の感染事例に興味をもった米国研究所所長が来日する。
面会すると、その所長は年端もいかぬ少女で……?


また見事にしてやられました。もう笑うしかない。
2巻を読んだときにふと気付いた疑問点がありました。
これもまた、あの読了後のもやもやに(今思うと)つながっていたのですが……。
まさかそれが伏線になっていたなんて。全く、予想だにしませんでした。ミスだとばかり思っていたのに。
ここまで綺麗に引っ掛けられると、もはや拍手を贈ることしかできません。これも一種の感動なのでしょうか。
こんなことがあるともう、誤字・脱字でさえわざとじゃないかと深読みしてしまいます。


今回も序盤はほのぼのとした日常が流れていくのですが、その一枚裏で着々と迫る危機。
それが突然、一気に爆発し、世界どころかこの作品ごとひっくり返るような事態に発展します。
それから目まぐるしく交錯する現実と空想。
今までの巻のことを考えれば落ちの予想は立つはずなのに、そうならないんじゃないかと不安にさせる怖さがある。
1巻と2巻の落ちさえも丸ごと覆しそうだから怖いんですよね。信じられるものが何もない。
作中にいきなりあの本が出てきたのには驚きました。遂に「物語」の垣根さえも超えようというのか。


新キャラ・メアリーが登場。
複雑な事情から11歳にしてアメリカで研究所の所長を務めている天才です。
はた目から見ても可哀想な境遇にあると思いますが、本人がそう思ってないからややこしい。
初登場ながら思い切りストーリーを引っ掻き回してくれました。見ていてなかなか楽しいキャラだと思います。
青井は安心の可愛さ。どこまで分かってやってるんでしょうこの人。
全部計算してやってるんだったらよっぽどの策士ですね。もう男とか女とかどうでもいいんじゃないかな。
予想以上の魅力を見せてくれたのは今井さん。おどおどした態度にくすぐられます。さりげなく森崎とゲームの約束をしてたりしてニヤニヤ。
そして結衣。メインヒロインはやっぱり圧巻でした。
結衣と景から始まって、景と結衣で終わる。
前途多難もいいところという具合のカップルですが、2人の絆があればいつかきっと報われる日が来ると信じたい。


この巻で「セカイ系編 了」だそうです。
言われてみると1巻や2巻にあったもやもやがほとんど消えているような気がしますね。
この3冊でひとつの物語だったと考えれば、綺麗にまとまっていると言えるのではないでしょうか。
まあここで素直に信じるとまた次で裏切られそうですけど。それはそれで楽しいじゃないですか!
ここからどう話が続くのでしょう。次の巻が待ち遠しいです。


ところで、「 ト ゥ ラ ウ ム 波 」(万が一のネタバレ回避で反転)が全部「 ト ゥ ラ ウ ム 派 」(反転)になっていたのはわざとなのでしょうか。単なるミスなのでしょうか。ああ、答えは出ない。