まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団』感想

ストーリー
「わたしも、あなたを夫として受け入れるわ」
これより二年の後、古の魔王再臨し、人類は滅ぶ。絶望の未来を塗り替えるため、《アレンヘムの聖女》セシリアと婚約し、最強の傭兵団《狂嗤の団》の団長となる道を選んだカレル。《アレンヘムの聖女》が持つ『自分の死を夢見る』という悪夢に希望の力を見いだしたカレルは、死の運命を回避する力を持った英雄として五芒国平定のため動き出す。一方その頃、幼くして女王の座を引き継いだ妹のため、暗愚を演じ続けていた王子ヴェッセルも権謀術数に長けた英雄として歴史の表舞台に姿を現す。玉座の頂を目指す英雄たちの叙事詩が今、幕を開ける!

師走トオル先生による新作戦記シリーズ!
聖女とともに傭兵団の団長として歩みだす主人公と、中央から暗躍を始める妾腹の王子。英雄が一人また一人と立ち、激動の時代が幕を開ける……これぞ! といわんばかりの1冊でした。やっぱり戦記モノといったら、これくらい期待感を高めてくれなきゃね!


魔王によって東半分を失った大陸。人間にエルフにドワーフ、ゴブリンにオークにトロールが闊歩する王道ファンタジー世界。この地図を見ているだけでワクワクしてきますけれども、一番の魅力はやはりキャラクター陣でしょう。
主人公カレルは、さしたる実績がないながらに傭兵団団長兼次期公爵として白羽の矢が立った青年。
ある程度強く、ある程度賢いことは確かなのですが、彼が団長として買われた理由が力でも頭脳でもなく「商才」だというのだから面白いですね。
誰がどう見ても強い歴代最強の傭兵コルネリウスや、わりと明確に智謀に長けているヴェッセルなどと比べて、彼はまだ発展途上の印象が強いし、結構な無茶もしでかしています。
しかしだからこそ、頼りになる仲間たちの力を借りながら勝利を目指すその姿に肩入れしたくなってくるんですな。


カレルを側で支える未来の妻・セシリアも大変魅力的なヒロインです。
自らの死を夢見る力を分け与えるため、一緒に寝なければならないという設定にニヤッとしちゃいますね! いいものだ……添い寝はいいものだ……。
まだ出会ったばかりで、お互いへの好意もようやく芽生え始めたところですが、これからのふたりの恋模様も楽しみで仕方ありません。
それから、カレルと長年ともに旅をしてきたエルフの少女・ミーリエルが大いに気になっております!
なんというか、非常にビミョーな立場にいる子なので(笑)、さすがにカレルとセシリアの間に割って入るようなことはないんだろうとは思いつつ、ちょっと期待もしてしまったり。


魔王との戦いの前に待ち受ける人間同士の戦い。実に不毛ではありますが、人間の意志を統一せねば勝てるものも勝てなくなるというもの。
大軍の第一波は退けたものの、また次の軍が押し寄せてくる。この窮地をカレルがいかに乗り切るのか……エレオノーラに言い放ったとんでもない一言の意図は一体!? ああ、次の巻が待ち遠しいぜ!


イラストは有坂あこさん。本文挿絵1枚めのミーリエルがすごい好き……。
それと、カレルやヴェッセルを差し置いて一番格好いいコルネリウスさんに惚れた。


「ヴェッセルがイエッタちゃんとアニカちゃんに左右から詰め寄られて押し倒される回」はよ。

『エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 8』感想

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 8 (MF文庫J)

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 8 (MF文庫J)

ストーリー
人類の悲願だったマリス群生地攻略に成功したエイルンコード。激戦の後の僅かな平穏。そんな中エイルンコードにスイスから極秘の依頼が届く。彼らはヘキサの刻印を除去し、人に戻す研究を進めており、それは最終段階へと進んでいた。依頼内容は実験終了までの研究施設と研究員の警護。しかし、『俺たちは急いでいる。どいてもらおうか、エイルンコード』2番機【バージンエリー】、4番機【猿王】、6番機【AGF31】、19番機【悠陽拾型】など総勢7体のサクラノツルギのネイバー軍団が強襲してきて――!? 爆発する爽快感! とにかく熱くて、火傷する、新世代ロボットライトノベル第八弾!

エイルンコードとサクラノツルギの正面衝突!
数多くのネイバーと戦機装が入り乱れ、そして何よりエイルンとジンという最強の2名が相対する。これで盛り上がらないわけがないのだ!(毎回言ってる気がするけど!)
衝撃の伏線も回収されて、クライマックスに向けていよいよ加速してきた感があります。


共に人々を救う大義がありながら、ぶつかることを避けられないエイルンとジン。
お互いのことを認めあっているからこそこうなってしまったわけだけれども、思うにこの両者には言葉が足りなすぎたよ……。こうなってしまうまで話さないジンもジンなら、話を聞こうとしないエイルンもエイルンだわ! こういうところ、実にロボットアニメの「主人公」らしい……。
いや正直イヤな予感がビンビンでしたけどね。我らがフェアリー・スリーは慧眼でした。茜はほんと有能な子です。


サクラノツルギが誇るネイバー軍団に立ち向かうデストブルムと明星。そして飛鳥謹製の超機体・グランヴォルカン。
戦機装なのにネイバーと渡り合うグランヴォルカンもとんでもない化物っぷりで燃えましたが、今回一番吠えていたのはやはり明星ですね。
キレた七扇は怖いわー。こんなに活躍していてもなぜか地味メンの印象が拭えないのが不思議っちゃ不思議ですけど。それが奴の持ち味ってね。
一方、エルフィーナの活躍は少し控えめ。まあ登場シーンは大暴れしてくれたので良しとします。これから絶対暴れまくってくれるしね。


あとがきによれば、あと2冊ほどで完結か、ということで。物語も佳境の佳境ですね。
明かされた事実に対してエイルンやセレンがどう向き合っていくのか。地球の命運を決定づける最後の戦いが楽しみで仕方ありません。


唯一、エイルンをなぐさめる側の立場を得たセレンさん。完全に妻の存在感である。

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外伝 ソード・オラトリア10』感想

ストーリー
「怪物のせいで誰かが泣くのなら──私は怪物を、殺す」
そして、『その日』はやって来た。
人造迷宮の『鍵』を探し求める【ロキ・ファミリア】に訪れる運命の契機、オラリオに動乱をもたらす異常事態。地上に出現した『武装したモンスター』によって、あらゆる勢力が巻き込まれる中、待ち望まれていた『英雄』は零落し――新たな『愚者』が生まれる。
剣姫は懊悩する。
勇者は覚悟する。
人と『怪物』を巡る戦いの中で、様々な想いが決戦の舞台、迷宮街で交錯する!
これは、もう一つの眷族の物語、
──【剣姫の神聖譚】──

本編9~11巻の裏側を描く外伝第10弾。
ロキ・ファミリアの面々、ベル君に毒されすぎぃ! 都市最強の面目はどこに行ってしまったんじゃ!
この辺はたぶんベル君も一番悩んでいた時期かなと思うんですが、こっちはこっちで、アイズもフィンも悩みまくり壁にぶつかりまくりです。足りない……僕らの癒やし、脳筋ティオナちゃん分が足りないんだぜ……!


人造迷宮と闇派閥、そして異端児たちをめぐる一連の戦い。
うーん、間違いなく濃密な450ページではあったんですけど、ただでさえ混乱しまくりだった異端児事件のさらに裏側なんて描かれちゃったもんだから、ちょっとさすがに疲れました……。
個人的にこの外伝に求めているのは、本編で見られなかったエピソードや冒険のお話であって、あちらでも散々描かれた事件の焼き直しではないんだよなあ(ちょっと言葉が悪いか)。もちろんアイズの冒険者としてのアイデンティティが揺らぐ大きな出来事がありましたからね、描かざるをえないのは分かるんですが。なんだかんだで面白いのは確かだし。


フィン。都市最強派閥をまとめ上げる小さき勇者。しかし完全無欠に見える彼にも、彼なりの葛藤があった――。
ロキ・ファミリアの幹部の面々は軒並み好きなんですけど、フィンだけはどうにも好きになれなかったんですよ。なんでかなって思ってたんですが、たぶんベル君と似た部分があるからなんだろうなあと今回読んでいて思いました。なんだかすげー主人公っぽいし。ベル君の主人公の座が奪われてしまいそうで。人工だろうがなんだろうが、英雄だもんなあ。くーっ、やっぱり好きじゃないわ!(笑)
一方で、ベル君やアイズに並び立つ主人公として躍り出てほしい筆頭はレフィーヤたんです。レフィーヤほんと好き。今回も魔法力特化型の特殊スキル持ち固定砲台っぷりを存分に発揮してくれていて最高でした。あとがきで書かれてた元々のプロット読みてえええええ! いつかまたベル君と共闘してくれ!!


さて、次に描かれるべきはどう考えてもアイズの成長ですよね。この後の彼女の姿はまだ本編でも語られていませんが、ベル君との戦いの中で見出してしまったものとどう向き合っていくのか大いに気になるところです。
僕はアイズ・ヴァレンシュタインを諦めない。また強く鋭くそして愛らしいヒーロー兼ヒロインとして舞い戻ってきてください。楽しみにしています。


我慢できずに竈火の館にカチコミかけちゃうレフィーヤたん……すこすこのすこ……。