まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『青春失格男と、ビタースイートキャット。』感想

ストーリー
高校に入学した日。野田進は桜の木から落ちてきた清楚系女子、宮村花恋と運命的な出会いをし、誰もが羨む高校生活を手に入れる。だが進は、そんな普通の幸せに満足できなかった。
「あなたは、青春不感症なんです」
そこに、エキセントリックな孤高の天才児、西條理々が現れる。彼女の言葉で、進の日常は甘くきれいに溶けだした。
「私の足を舐めろ、です。大人の味を教えてあげます」
友人も、家族も断ち切って、世間から孤立する。進と理々だけの秘密の共犯関係――“楽園追放計画”が始まった。目を背け、逃げ続ける。ふたりだけの幸せを信じて。

第30回ファンタジア大賞<審査員特別賞>受賞作品。
青春に興味を持つことができない少年が、唯一心を満たしてくれる孤高の少女と出逢い、2人きりの世界への逃避を目指す、ほろ苦青春ストーリー。
世間の普通に迎合することのできない少年少女が周囲との交わりを絶とうと試み、そして限界にぶち当たっていく苦しみがじんわりと胸を締めてくる作品でした。愛の形にフェティシズムが溢れていて素晴らしい。


高校に入学して早々、クラスメイトの美少女から告白されてしまった主人公のシン。しかし彼は恋愛や友人関係などに興味を持てない「青春不感症」なのでした。
告白してきた女の子・宮村さんは可愛く優しくちょっとえっちく、と非常に魅力的なヒロインで、このまま彼女と付き合うことができれば何も問題なくハッピーエンドでいいくらいなのですが、主人公の方がこうなのだから仕方ないですね……。男なんて選びたい放題だろうに、よりによってこんな厄介な相手を好きになってしまって、不憫すぎる。
恋愛をすれば何か変わるかもしれないと消極的に期待していたシンの前に現れたのは、周囲を寄せ付けず学校でも浮いている天才少女の西條。
シンの青春不感症を見抜き、シンよりも自分が上だということを決定づけるために彼女が命じてきたのは、足を舐めること。
出会い頭に公衆の面前で足を舐めさせる女とかもうヤバさの塊でしかないですけど、そこで舐めちゃうんだもんなーシンさん! しかもめっちゃ興奮してるんだもんなー! いや分かるよ、そのフェチは分かるんですけどね。正直テンション上がりますけどね。
そのprpr【ペロペロ】描写がまた、非常にねっとりしていてね。変態性を隠さず端的に言うと最高でした。


シンと西條。お互いさえいればそれでいい、他の人間なんていらない、とふたりで遂行しようとする「楽園追放計画」。
でもシンも、そして実は西條も、宮村さんをはじめ周囲の人たちを悲しませるようなことはできなくて。興味がないのだから全部ぶん投げてしまえればいいのだけれど、ふたりとも変に優しい部分があるから、結局がんじがらめで何もできない。ただ学校の隅でprprするだけ。そんな逃避ともいえないような逃避関係が切ない。
ええいと思いきったところで、シンも西條もただの高校生でしかない。ふたりのやっていることに共感はできないけれど、自分の思う通りに物事が進まないもどかしさ、自分の力の限界に感じる虚無感、そういったものには思い当たる部分がありました。
ふたりきりの逃走劇の終幕は思わぬ形で。シン、西條、そして宮村さんの歪んだ日常がこれからどう進んでゆくのか、今後の展開が楽しみです。


イラストはいけやさん。女の子たちの表情が素晴らしくよかったです。
特にやっぱりprprシーンが格別。これは舐める。舐めざるをえない。


初デートで会って早々に胸を触らせる宮村さんも冷静に考えたら大概である(すき)。