まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

2015年ライトノベル新作ベスト10【既存作家部門】

 あけましておめでとうございます。
 昨年は(数え間違いがなければ)392冊ほど読めまして、人生最高のライトノベル充な1年でした。でもやっぱり積み本は増えちゃったので、今年はさらに読めるといいなと思います。
 ということで、2015年新作まとめの既存作家部門を紹介していきます。新人作家部門はこちら→2015年ライトノベル新作ベスト10【新人作家部門】 - まだまだペンキぬりたて
 紹介の順番は前回同様、1巻の刊行順です。



『魔剣の軍師と虹の兵団』(MF文庫J

 2015年もちょこちょこと出てきた戦記ものですが、その中でもギャグ特化で戦記ものをやるという新境地を見せてくれたファンタジー。滅亡寸前の王国を復興すべく立ち上がる英雄たちの物語なのですが、その英雄たちがことごとく残念な変態! 日常パートで思いっきり笑わせてくれつつ、いざ戦になるとしっかり軍師ものらしく計略で魅せてくれるので、色んな楽しみ方ができる作品でした。3巻まで出ていますが引き続き面白く、続きが楽しみなシリーズです。



妹さえいればいい。』(ガガガ文庫

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

 平坂読先生がラノベ作家ものを書いた! ということで、話題沸騰中の作品。今さら紹介するのも恥ずかしいくらいですが、しょうがないよね、面白いもの……。変態的な作家陣の姿に笑い、悲哀溢れる姿に切なくなり、非電源系ゲームをワイワイとやる姿に羨ましさを感じ……と、全方向にエンタメ性が強くて非常に楽しい作品でした。2巻〜3巻では恋愛方面が少しずつ発展してきていて、そちらの期待感も高まりつつありますね!



ゲーマーズ!』(ファンタジア文庫

 泣く子も黙る葵せきな先生の新作。こちらも「このライトノベルがすごい!」をはじめ各所で既にオススメされちゃっている作品ですが、しょうがないよね、面白いもの……。とにかくキャラクターたちのすれ違いっぷりが見事すぎて、「なんでだよ!なんでそうなっちゃうんだよ!」と頭を抱えてしまう、2015年を代表するラブコメ作品でした。毎巻の引きが凄まじくて、特に最新3巻は最後にとんでもない爆弾を落としていってくれたものだから、もう続きが気になって気になって仕方ないです。



『魔法使いの召使い』(ガガガ文庫

魔法使いの召使い (ガガガ文庫)

魔法使いの召使い (ガガガ文庫)

 魔法使いの家に雇われることになった女の子が、不器用ながらもひたむきに頑張って働いていく児童小説的ファンタジー。上記2作とは打って変わって、私の他に話題に上げている人をほとんど見かけなかったのですが……。とにかく文体のこだわりが凄くって、まるで翻訳された海外ファンタジーを読んでいるかのような言い回しが随所に散りばめられていて、なんか大好きだったあの本やこの本を思い出してノスタルジックな気分にさせられてしまい、気付いたら大好きになっていました。海外の冒険小説を読んで育ったあなたにぜひ読んでいただきたい1冊です。



『イチから始める最強勇者育成』(ファンタジア文庫

 最近流行りの教官ものの一種……なのだけれど、3人の勇者が全員残念すぎてまともに育成できないファンタジーコメディ。新米勇者ヒロイン3人から軽んじられまくりな元最強勇者の主人公の、健気&過保護すぎる陰の奮闘っぷりが涙を誘う(笑)作品です。新米勇者たちの暴走っぷりは笑えるし、かけあいも軽妙でとても楽しく、気軽に読める。長く続いてほしいシリーズですね。



『いつか世界を救うために ―クオリディア・コード―』(ファンタジア文庫

 2015年のライトノベル業界十大ニュースを上げるなら間違いなく入るであろうシェアードワールド「プロジェクト・クオリディア」。早くもアニメ化が発表されましたね。さがら・渡の両先生による奇跡的なかみ合わせで書かれ、よはねすという超S級ヒロインを生み出した傑作『クズと金貨のクオリディア』ダッシュエックス文庫)に、さがら先生特有のテクニカルな文章が炸裂している「東京編」の『そんな世界は壊してしまえ』MF文庫J)と、どれを読んでも格別に面白いというとんでもない作品群です。
 そんな中、1巻の爆発力という意味でチョイスしたのが「神奈川編」の今作。神奈川最強を誇る無敵のヒロインに対し、偵察任務と称して特級異能を全力で使ってストーカー行為に励む真面目にクズな主人公が面白すぎる! バトル描写も迫力たっぷりで楽しさ満点の1冊でした。一足先に2巻の発売も決まって、ますますの盛り上がりに期待のかかるシリーズです。



『SとSの不埒な同盟』(ダッシュエックス文庫

 野村美月先生は2015年も作品を出しまくってくれた上、全部面白いという安定っぷりで、ファンとしては本当に幸せな1年でした。下読み男子と投稿女子ファミ通文庫)は色んな方面で話題に上りましたね。最高にきゅんきゅんする青春小説でありながら、小説への読者としての向き合い方を考えさせられる良作でした。
 今作は、Sな主人公とSなヒロインという、野村作品にしては珍しい組み合わせの作品。SなふたりがそれぞれMなターゲットに狙いを定めて妄想を語り合ったり、別の相手と付き合ったりしつつ、最終的にはS同士で恋愛が成立するのか、という、くっつきそうでくっつかない2人の姿が楽しくてたまらないお話でした。2巻完結なのでさくっといけちゃいますよ!



ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士』(ダッシュエックス文庫

 歴史ネタライトノベルの名手・春日みかげ先生が新たに紡ぐ、英仏百年戦争をテーマとした一大叙事詩! 舞台は十五世紀フランス、主人公はジャンヌ・ダルクアーサー王伝説に聖書にオリジナルの神話まで……要素をこれでもかとばかりに詰め込んで、とてつもない情報量と文章圧で力任せにそれをまとめ切ってしまう手腕に、もはや脱帽。序盤がほぼ情勢の説明パートになっているので最初はとっつきにくさを感じるかもしれませんが、いざ戦いが始まってからの盛り上がりは素晴らしかったです。どこまで行ってくれるか楽しみな作品ですね。



『魔境戦区のナイチンゲール』(スニーカー文庫

魔境戦区のナイチンゲール (角川スニーカー文庫)

魔境戦区のナイチンゲール (角川スニーカー文庫)

 医療が神によって厳しく取り締まられている世界で、民のために違法医療に励む「医術師」と「看護士」たちの魔法×医療ファンタジー。ちょっとしたキャラクターたちのやりとりにセンスを感じる1冊でした。表の顔は武器商人、裏の顔は医療従事キャラバンの婦長、そして手にはフリントロック銃という異色のヒロインがやたら可愛いんだ!
 魔法医療ものとしては他に『魔法医師の診療記録』ガガガ文庫)がありましたね。こちらも良かった。ニッチながら着実な面白さを見せてくれるジャンルでもあるので、ちょこちょこ出てきてくれると嬉しいです。



『MOE―召喚しませ!おとめなえいたんご』(電撃文庫

 英単語をテーマにしたVR-MMOで最愛のキャラクター「explode」ちゃんを手に入れるために奮闘する、おバカで才能に溢れる変態どものお話。非常にライトなパッケージングながら、その実やってることはガッチガチの暗号解読というギャップにしてやられました。もはや哲学の領域にまで昇華した「萌え」、いや「MOE」、の近未来SF感とか、もう色んな所がハイセンスすぎて笑うしかない、凄まじい1冊でしたね……。2015年を代表する奇書のひとつ、かもしれない。



 以上10作品……とかいいつつ、途中途中で何冊も紹介しちゃっていた気がしますがご愛嬌。いやあ、2015年は本当に面白い新作が盛りだくさんで、選ぶのが大変だったんですよ!
 杉井光先生の『夜桜ヴァンパネルラ』電撃文庫)、入間人間先生の『美少女とは、斬る事と見つけたり』電撃文庫)、岩井恭平先生の東京侵域:クローズドエデンスニーカー文庫)、雨木シュウスケ先生のグリモアコートの乙女たち』講談社ラノベ文庫)など、強力作家陣の新作がバンバン出た年でしたね。白鳥士郎先生の将棋ラノベりゅうおうのおしごと!GA文庫)は各所で話題になっていました。どれもこれも面白かった!
 『ゲーマーズ!』をはじめとした、ラブコメの定番をちょっと外したラブコメも印象的です。同じくすれ違い系の『たまらん!』MF文庫J)や、幼なじみヒロインのかませ犬イメージを逆手に取った『かませ系ヒロインルートの結末を俺は知らない』スニーカー文庫)も面白かったですね。どちらも続きが非常に気になる作品でした。
 その他、滝川廉治先生の新作ということで話題になった『MONUMENT あるいは自分自身の怪物』ダッシュエックス文庫)や、耳目口司先生のダークな部分が存分に出た上下巻『愚者のジャンクション』スニーカー文庫)、ギャグに振りつつも忘れずに下克上を入れてきた新見聖先生の『僕とドSと腐女子脳筋MF文庫J)などなど……。
 とても紹介しきれませんが、本当に面白い作品がいっぱいで、大満足の1年でした。今年もたくさんのライトノベルと出会えるといいな。

 長々と読んでいただきありがとうございました。今年もよろしくお願いいたします。