まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。』感想

ストーリー
理想の恋愛なんて、現実にはなりえない。日陰作家のぼくにできるのは、妄想満載の小説を書くことくらい。なのに――「私に恋を教えてください、先生!」そんなぼくを恋愛マスターと勘違いした、演劇部のヒロイン・綾瀬マイ。理想の恋愛を実現するため、綾瀬さんとのラブコメ研究が始まって、「恥ずかしい台詞とかあっても……頑張りますから!」あくまで演技指導だからね!? 脇役未満の“裏方”から挑む、青春ラブコメ攻略論!

作家の卵だけれど学校では没キャラな主人公が、演劇部のエースにして学校のヒロインと噂される女の子に恋をして、身分不相応な気持ちに思い悩む学園ラブコメディ。
演劇部の脚本家として、好きになった女の子の恋愛劇を見ていることしかできない主人公の、諦め混じりの恋。それでも消せない気持ちに懊悩する姿が、直球の青春でとても良かったです。
文章もなかなかに魅力的で、描写のそこかしこに作者のセンスを感じました。印象的な台詞が結構あります。


編集者はついているけれどデビューはしていない、そんな作家もどきの高校生・青木。高校の入学式の日に一目惚れに落ちる。
まずこの一目惚れのシーンがとてもいいですね。2~3ページしかないプロローグの一場面で、ヒロイン・綾瀬との会話やイベントがあるわけでもないんだけれど、好きになっちゃったのがわかる。人を好きになるときって、得てしてこんなもんだったりするのである。
演劇部のヒロインとなり、学校中の人気者となった綾瀬。そんな彼女がある日突然青木のもとへやってきて、「恋を教えて欲しいのです」とかのたまう。
普通ならば、片思いの相手とお近づきになれて喜ぶところなんでしょうが……表舞台に立つ彼女と、あくまで裏方でしかない自分とでは到底釣り合わないからと、恋仲になるのは初めから諦めているようなところもあって。いやめっちゃわかる。めっちゃわかるんだけれど、綾瀬は明らかに青木に興味を持ってくれているのに、自分から勝手に一歩引いちゃうあたりが、とてももどかしい。


演劇部の脚本家となった青木は、ヒロイン役である綾瀬と、主演であるイケメン・高良の演じる恋愛劇を毎回見せられることに。
あー! このシチュエーションすごいもだもだするー! 学年一の美少女とイケメンの、誰もが認めるカップル。そんなふたりが自分の描いた脚本のもとで恋をする。切なすぎて胸がぎゅっと痛くなっちゃう!
傍目からすると、青木と綾瀬はかなりいい感じだと思うし、逆に綾瀬と高良の関係が特別近いようにも見えません。しかしだからといって、ザ主役系なイケメン(しかも人間的にもめっちゃいい奴)に自分が勝てるとは到底思えず、むしろ綾瀬と高良が付き合うのは当然とさえ感じてしまうというのが……わかる、わかるぞ。
挙げ句には高良本人から綾瀬への恋心を打ち明けられて、脚本で告白の手伝いまで頼まれてしまうのですが……そんなん書けるわけないやろがい!!
スランプに陥り、どんどん暗くなっていく青木。そんな彼の背中を、かなり乱暴で無茶苦茶なやり方で押してくれる数少ない友人たち。
主役は主役としか恋しないなんて、そんなばかなことあるものか。走れよ少年。まっしぐらに。君にはラブコメの神様がついている。
物語は綺麗にまとまっているのですが、この先のお話も読みたくて仕方ないです。続いてくれないかなあ。続いてくれるといいなあ。


イラストは前屋進さん。綾瀬の笑顔が眩しいぜ……。
P292~293のイラスト演出が最高でした。


「デートっていうのは女の子がワンピースを着て初めてデートなんだよ」って台詞は天才かと思った。