まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

エイルン・ラストコード 〜架空世界より戦場へ〜

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ (MF文庫J)

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ (MF文庫J)

ストーリー
西暦2070年、人類が謎の生命体マリスから襲撃を受けて半世紀以上。
マリスに唯一対抗できる巨大兵器デストブルムのパイロット・セレナは絶望的な戦いに疲弊しきっていた。
そんなある日、戦場の空から国籍不明の謎の戦闘機が出現、この世界に存在しない超兵器でマリスを一掃してみせる……。



人間を襲う怪物マリスとの戦闘が激化の一途を辿る近未来。アニメの世界からやってきた主人公とスーパーロボットが、戦いたくないのに戦わされるひとりの少女を救うために立ち上がる、愛と希望の熱血ロボットアクション。
めちゃくちゃ面白かったです!! 誰も味方になってくれないヒロインと、誰も信じてくれない主人公。ふたりだけの絆。他の誰も頼れない。だから……君のために、今戦う! うおおおおお、激アツ!!
イラスト・メカデザインに3人も起用したとあって、ロボットやメカ、怪物たちのビジュアルイメージもばっちり。まさか本文中に漫画が入ってくるとは思いませんでしたが、それがまた効果的で素晴らしい。とても意欲的な試みだと思います。


ヒロイン・セレンは、パイロットの代用が利かない巨大戦闘兵器・デストブルムに選ばれてしまった少女。
自分にフィードバックする痛覚や迫り来る死。それらへの恐怖から、戦いを避けて逃げ出すのだけれど、マリスを倒すことができるのは彼女の機体だけで、強制的に連れ戻らされてはひどい扱いを受け、また戦場へ送り込まれる。
そんな辛く苦しい日々の中から彼女の心を救い出したのは、戦場で出逢った少年でした。
主人公・エイルンはひたすらまっすぐで、いかにも主人公然とした、実に気持ちのいい男ですね。怪獣と戦う、なんてただでさえアニメみたいな世界設定なのに、彼はさらにその作中のアニメの中から飛び出してきたキャラクターだっていうんだから面白いじゃないですか。
エイルン自身からすれば、アニメの中の出来事は全て現実。でも周囲からの目はアニメキャラになりきった痛いアニメオタクに向けるそれで、誰からも信じてもらえない孤独な境遇は、セレンの抱く孤独と合わさって胸が二重に痛くなってきます。
そんなふたりが出逢い、わずかな時間ながら親交を温めることができたのは本当にによかった。痛む胸も少し温かくなりました。


敢えてこの世界の戦いに身を投じることを避けていたエイルンですが、そんな彼が立ち上がるきっかけはとても単純なこと。
理屈で固められた軍の人々の中にあって、彼のヒロイックな姿はたいへんに輝いて映ります。ロマンに生きてもいいじゃない、だってアニメのキャラクターなんだもの!
マリスとの戦闘シーンがまた圧巻でした。なんといっても、主人公機のエルフィーナが最高に格好良いんだ!
スマートかつスタイリッシュなデザインもさることながら、淑女をイメージした機体のコンセプトが私の趣味にドンピシャでハマってもう目が離せない。AIとエイルンとのウイットに富んだ掛け合いも素晴らしい。いやもうこのロボットたまらんわ。
いやはや、MF文庫Jがガチで推しにくるのも分かる傑作でございました。続きも楽しみにしています。


イラストはみことあけみさん、汐山このむさん、貞松龍壱さん。ハッキリ言って文句のつけようがありません。
公式サイトの設定集も情報量豊富で素晴らしかったです。なおネタバレ三昧なので既読者向け。


ぜひアニメまで行ってもらいたい。もちろんエイルンの声優さんはあの人で……。