まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

そんな世界は壊してしまえ ―クオリディア・コード―

ストーリー
湾岸防衛都市東京の学園に所属する朱雀壱也は、人類を愛しすぎていた。
そんな彼にかつて告白をしてしまい、消えない黒歴史を作った同級生・鵜飼つぐみと共に、新たな任務に就く朱雀。
それは、戦闘科に不適格と判断された人員の追い出し役で……。



さがら総先生が描く、シェアードワールド「プロジェクトクオリディア」の東京編。
人類全てを愛する代わりに個人を愛することが理解できないポジティブクズ主人公・朱雀がなんとも独特なキャラクターでしたね。
朱雀の人類愛の信念と、東京の戦闘科独自のエリート意識。果たして彼は、凝り固まった世界を壊すことができるのか……。


頑張る人類全てを愛している代わり、個人の人間を愛するという気持ちが分からない少年・朱雀。
かつて何かの間違いでそんな彼に告白をしてしまい、見事に撃沈した少女・つぐみ。
ふたりの夫婦漫才(ただし思いは一方的)はなかなか楽しかったですね。朱雀に対して愛想を尽かしつつも未だに未練があって、何かのはずみで落ちそうになったり、嫉妬しそうになっては、また呆れ返る、を繰り返すチョロいつぐみが可愛い。
戦闘科に不適格な生徒の「追い出し課」となった両名ですが、対象生徒に自信を取り戻してもらうとか言いつつ、模擬戦でボコボコにしては「がんばれ! 元気出せ! やればできる!」と暑苦しい応援をぶちかまして、完璧に心を折っていく朱雀さん怖すぎです。鬼か……。
つぐみのツッコミにも全く動じることなく独自の人類愛を貫いてくるし、あれ、もしかしてこの主人公ってだいぶダメなんじゃないかな? と、わりと早めに気付くことになりました。
しかし、新たに追い出し課のターゲットとなった謎の転校生・カナリアは、そんな朱雀をもってしても圧倒されるスーパーポジティブなドMで……。主人公とメインヒロイン(?)がコレで本当にいいのか。


他の都市とは違い、飛翔能力を必須とする東京戦闘科のエリート意識。力のない者は大人しく引っ込むべきだという朱雀の信念。立場は違えど、どこか似たところのある両者。
特に前者はかなり鼻についてきて、見ていて吐き気がしてくるのですが、ダメな人間にも寛容と思われた朱雀もだいぶ近い考えを持っているようで、少しがっかりさせられました。
そんな朱雀の信念に穴を開けかけた、盲目的なほどのカナリアの「愛」。
凝り固まった世界のシステムに打ち勝って、朱雀は新たな風を得ることができるのか。次巻での彼の決断に期待です。


イラストはカントクさん。もはや賛辞を述べるまでもないですね。
どのイラストも最高に可愛くて素晴らしかったのですが、一番はやっぱりパンツかな……(惚れ惚れ)。


女子トイレ前で水着ダブルピース。うん。