まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

夜桜ヴァンパネルラ

ストーリー
人々を《吸血種》から護るために設立された『捜査第九課』の唯一の課員・櫻夜倫子。
暴走した吸血種を狩る彼女は、自身も《真祖》の吸血種だった。
そんな倫子の相棒として、バカだが熱心な新人・桐崎紅朗が第九課へ配属されるのだが……。



杉井光先生の新作! 警察に所属して同族を狩る《吸血種》のヒロインと、彼女の相棒として働くおバカな新人刑事が織りなす、ポリス×ヴァンパイア×アクションストーリー。
うーむ、さすが。人間の同僚から疎まれ嫌われながらも、信念を持って自分と同じ《吸血種》を手に掛ける孤高のヒロイン・倫子が実に魅力的でした。相棒のアホの子主人公がまたいい味出してますね。
警視庁内での争いや、現場と中央の諍いなど、警察モノらしい要素もしっかり描かれていて、そちらの方面でも楽しめました。


人から人へ感染する《吸血種》。感染者は人の血を吸って生きるようになり、しまいには人の形を失って暴走してしまう……そんな呪われた病。
そんな吸血種たちが引き起こす事件に対し、日本で初めて専門捜査課が置かれた警視庁。ヒロインの倫子は、その第九課に所属する警部にして、自身も《真祖》すなわち第一世代の吸血種です。
人々から「蛭」「化け物」と蔑まれている吸血種。彼女も当然、周囲からはよく思われていません。内閣府からの出向であることも手伝って、他課の捜査官からは悪口を言われ、上司からは情報を隠され……。
そのようなひどい環境にもじっと耐え、事件が起これば誰より先に危険に飛び込み、暴走した同族である吸血種を殺す。孤独で格好良いんだけれど、あまりに切なく悲しい立場のヒロインでした。
そんな彼女の部下として新しく配属になった主人公・紅朗は、純粋でまっすぐだけれどすっごくおバカ!
難しいことは分からない、常識も教養もない、鈍い、ただ自分の思ったことを素直に言う、とても刑事としてはやっていけそうにない紅朗くん。でもその少年みたいなまっすぐな正直さは、あれこれ黒い思惑が渦巻く警察組織の中ではとても貴重なものに思えます。
人々が抱いている吸血種への隔意もなく、ただ人を守りたいから刑事になったという彼は、倫子の相棒役としてピッタリでした。紅朗が天然をやらかしては、驚き呆れた倫子がツッコむ、ふたりのやりとりが楽しくて仕方ありません。


東京の闇にうごめく、謎の吸血種組織「キングダム」。
彼らを追う中で、倫子と紅朗のふたりは命の危険に幾度となく晒されることになります。それどころか、数少ない友人の少女まで……。
こうも人に嫌われて、同族からも避けられて、何度も何度も死にかけて、なぜこうまでして倫子は吸血種を狩り続けるのか。
いっそ悲壮なまでの決意で、また新たな事件に立ち向かってゆく倫子ですが、今、彼女の隣には初めての相棒ができました。紅朗の底抜けの明るさに救われて、ヴァンパイアはまた東京の夜を往きます。
ぜひとも続いていってほしいシリーズですが……とりあえずは倫子と紅朗の今後が気になりますね! 上司と部下、そして捕食者と餌(笑)の関係から、何か進展があるのでしょうか。期待したいところですね。見た目は完全に女子中学生ですが、26歳だから大丈夫! ヴァンパイアって最高だな!


イラストは崎由けぇきさん。危険な匂いと儚さの漂う倫子のデザインが素晴らしいです。
でもなんでこんなエロい服着てるんでしょう……いや、それもヴァンパイアっぽいけど、一応警部ですよね!


東大法学部卒の矢神さん嫌いになれない。