まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

東京レイヴンズ8 over-cry

ストーリー
夏目の秘密と、「約束の男の子」の真実を知ってしまい、春虎たちを避けつづける京子。
一方、シェイバとの戦い以来、春虎は呪力を制御できず不安定な状態に陥っていた。
幾つもの不安が渦巻く中、土御門宗家が何者かによって襲撃される事件が起こり……。



いったいこの作品は、どこまで我々を驚愕させてくれれば気が済むのでしょうか。
6巻で作品のテンションがワンランク上がって以来、ここまで、その勢いを全く落とすことなく駆け抜けてくれました。いやあ、今回も素晴らしかったです。
6、7巻はバトルメインだったように思いますが、今回のキーワードは、友情と、恋と、陰謀でしょうか。春虎や夏目をめぐる人間関係が、根底から大きく揺れ動く巻になりました。それで最終的に、アレですからね。人間関係どころか、もう、今までの物語自体を一気に覆しに来たんじゃないかってくらいですよ。たまりませんね。


夏目が女だということがバレた結果、険悪になってしまった、春虎たちと京子。
ただ騙されていただけならともかく、京子の場合は、恋愛が絡んできているから、それはもう、複雑な心境ですよね。
春虎たちが誠心誠意謝ろうとするのは当然として、京子の方も、とっさにあんなことを言ってしまったことをずっと悔やんでいて、でもこちらから歩み寄ることもできなくて、なかなか先に進めない。
と、そこで頼りになるのが私たちのアイドル・鈴鹿ちゃんですよ。いつの間にやら京子とセットといっても過言ではない関係になっていた鈴鹿ですが、春虎とのことで京子に色々世話になった分だけ、恩返しの気分になったのかもしれません。他の誰にも言わずに、というところがまた、クールで格好良いですよね。
夏目と京子の仲直りは、見ていて胸が温かくなりました。秘密がバレてしまったことによって、夏目は図らずも、真の友人をまたひとり、得たことになりますね。彼女がずっと孤独に戦っていた頃のことを思うと、今の状況がどれだけ恵まれていることか。まるで自分のことのように、嬉しく感じてしまうのでした。


夏目が女だった。この事実は、春虎たちが、そして私たちが思っていたより遥かに強固に、巧妙に隠されていたようです。
その事実を知ったときの一流陰陽師たちの反応たるや! なるほど、これが乙種呪術というものですか。お見事、のひと言ですね。
そしてその秘密は、ただの男女の違いということだけではない、より大きな秘密の存在を明かすこととなりました。
いやあ、作中の人物たちはおろか、私たちまで見事に騙されていたわけですね。参りました。土御門泰純恐るべし、であります。
全く、この作品の大人たちは、どれだけ子どもたちをこけにすれば気が済むのでしょうか!
闇に暗躍する陰陽師は、敵側だけではなかったということですよね。まったく、つくづくとんでもない業界だと思います。なまじ世間的な地位が認められているからたちが悪い。
陰陽庁、ひいては倉橋長官の思惑は、なんとなくですが、見えてきたような気がします。一方の土御門の側は、これから次第に描かれていくのでしょう。夏目の親だけでなく、春虎の両親も遂に登場してきたことですし、彼らが、今後の展開の鍵を握っていそうですね。


さて、さんざん大人たちにしてやられた春虎たちですけれども、そろそろ、反撃の時間が近づいているような予感がします。
あとがきによれば、次巻は第一部完結編になるということで、解き放たれた闇鴉の雛たちが、どのような活躍ぶりを見せてくれるのか、今からわくわくが止まりません。
もちろん、その前に、今回ラストの鬼のような引きに決着をつけていただきたいところです! ちょっと、これどうなっちゃうの! やっとここまでこぎつけたのに、そんなのってないですよ! 最後の1行がずきずきと染みて痛いんですけど!
果たして、春虎と夏目の運命やいかに。彼らの行く末に幸せが待っていることを願いつつ、次を待ちたいと思います。


アニメ化おめでとうございます! 原色でギラギラした迫力のバトルシーンを期待したいですね。