まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

豚は飛んでもただの豚?

豚は飛んでもただの豚? (MF文庫J)

豚は飛んでもただの豚? (MF文庫J)

ストーリー
元不良でこの春から高校生になる真宮逢人は、バイト先から逃走する食い逃げ犯を追いかけていた。
逃げられそうになったところを、ポニーテールの美少女・藤室綾のハイキックに助けられる。
高校の入学式当日、真宮の席の目の前には、見覚えのあるポニーテールが揺れていて……。



第7回MF文庫Jライトノベル新人賞<最優秀賞>受賞作品。
ボクシングにばかり打ち込んでいた元不良の少年が、三つ子の美少女姉妹と出会って初恋を知り、少しずつ変わっていく青春ストーリーです。
言い回しが少し回りくどくて、初めは読みにくさを感じましたが、読了感は良かったですね。気分がさっぱりとするお話でした。


ボクシングを始める前までケンカ三昧の毎日を送っていた主人公・真宮。
深く他人と関わることもなく、恋人はおろか友だちさえ作らず、ひとりでむすっと過ごしてきた真宮ですが、綾と出会ってから、生まれて初めての気持ちに気付きます。
不良といってもチャラチャラした感じではなくて、ただ殴り合うことにしか興味がなかったというだけの少年なので、こういうことに関してはひどく純朴。
主人公としてはどうもノリが悪いし、すぐに突っかかっていく態度はあまり好きになれませんが、恋愛面では小学4年生の男子かよと言いたくなるような子供っぽさで、見ていて微笑ましいですね。


ヒロインは三つ子の美少女三姉妹。甲乙付けがたい、可愛い子揃いですね。
サバサバしているお姉さんタイプの綾、弱気で思わず守ってあげたくなるような雲雀、面倒見のいい友だちといった雰囲気の瑞姫。
真宮の初恋の相手は綾なのですが、そこで右も左も分からない真宮に対して恋愛指南をしていくのが、三女の瑞姫です。
いやあ、今までは普通に喋っていた綾を意識しすぎてどぎまぎしてしまう真宮にもニヤニヤしますけど、個人的に推していきたいのは瑞姫の方。
男友達の恋愛に助言をしていくというだけで色々想像がふくらむのに、そのお相手が実の姉であるわけで、これはもう何も無いほうがおかしい。
協力関係から始まる恋愛というのは、わりと黄金パターンとして確立されているような気もしますが、そこに姉妹要素が加わることで、また新たな味が出ていると思います。
女の子が苦手なはずの真宮だけれど、瑞姫とだけは普通に話すことができる。それが特別なことなんだと気付くには、まだまだ真宮の経験が足りないのかもしれません。


瑞姫のような立ち位置のキャラとのすれ違いも定番といえば定番ですが、やはりいいものですね。胸がきゅっと切なくなる。
とりあえずは元の鞘に収まった形となりましたが、これから真宮が綾を思い続けるのか、瑞姫に流れるのかは、全く予想がつきません。
雲雀とは軽く接しただけですけれど、次回からは彼女とも何かイベントがあるのかもしれないし。
でも雲雀にはブータ君がいるからなあ。ブータ君は普通に格好良いと思うのですがどうでしょう。彼にはもっともっと活躍してもらいたいですね。
終わってみると、恋愛よりも友情や成長の方に重きが置かれていたようにも感じました。
まだ物語は始まったばかりですから、これから少しずつ恋が動いていくといいなあと思います。次巻も楽しみ。


イラストは白身魚さん。安定感抜群の可愛らしさを放つイラストの数々に惚れ惚れしますね。
ビジュアルでは綾が一番好みかもしれません。ポニーテールをつかまえたイラストが特に好き。


こんな美少女の幼なじみが3人も……ブータ君はおいしい人生を歩んできているなあ。