まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

生徒会探偵キリカ1

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

ストーリー
牧村ひかげが編入した高校は、中高一貫で生徒数8000人という超巨大校・白樹台学園。
その生徒会を牛耳るのは、たった三人の女の子だった。
むりやり生徒会に引きずり込まれたひかげは、会計・聖橋キリカの「もうひとつの役職」を手伝うことになり……。



講談社ラノベ文庫のレーベル立ち上げ作品となる、杉井光先生の新作。
いかにも「らしい」あらすじを見て、出る前からとても楽しみにしていたのですが、その期待を上回る面白さでした。


親から逃げて白樹台学園にやってきたひかげ。その学園のトップに君臨していたのは、3人の生徒会役員たち。
無茶苦茶なアイディアと言動で周りを振り回す暴君生徒会長・天王寺狐徹。
いつも優しく、丁寧なことばや物腰とは裏腹に、会長の右腕にふさわしい腹黒さを持ち合わせる副会長・竹内美園。
そして、八億円にのぼる学園の予算を一手に引き受ける会計にして生徒会室の引きこもり・聖橋キリカ。
それぞれ変人で、我が強いけれど、その分惹きつけられる魅力があって、この巨大な学園をまとめ上げるカリスマ性を感じます。
ボケ揃いのこの3人と、孤独にツッコミ兼いじられ役として頑張るひかげとの、漫才のようなやりとりが実に楽しい。
ひかげにベタ惚れな副会長も素敵だけれど、やはり何と言っても、キリカが可愛いですね。
他人との関わりを避けて引きこもっている彼女が、少しずつひかげと打ち解けていく様子にきゅんきゅんします。
人嫌いで、しかもまだ出逢ったばかりなのに、なぜかひかげとは一緒にいられるということに、特別なものを感じます。ちょっとロマンチックじゃないですか。
面と向かって言えないことばを、ひかげ(うさぎ)に向かって投げかけるようにするところとか、悶絶ものでした。ごちそうさまです。


会計の仕事の裏で、キリカが行なっているもうひとつの業務が、タイトルにもなっている生徒会の「探偵」です。
学園内で起こるトラブルを、持ち前のひらめきであっという間に一刀両断、解決してしまうのがとても気持ちいい。
まるでお小遣いのような値段ながら、料金をしっかり徴収するところはさすがの会計担当というところでしょうか。
ここで意外な能力を発揮したのが、キリカの補佐役になったひかげ。
ただ謎を解くだけで終わらずに、その事実をうまくねじ曲げながら本当の解決へと導くこの手腕、まさに詐欺師の名がふさわしいと言えましょう。
そんな感じでトラブルを解決しながら、まったり進む日常探偵ものなのだとばかり思っていたら、終盤の展開で度肝を抜かれました。
キリカのためにひかげが思いついたとんでもない手段。思いつくひかげの方も、それに全力で乗っかる生徒会の方もどこかおかしい。
何をやっているのかさっぱり分からなくて、気付いたのは最後の最後だったのですが、思わず鳥肌が立ってしまいました。
そう、キリカは有能な探偵でもあるけれど、それと同時に有能な会計でもあったんです。


絶妙な伏線回収とけれん味に満ちた演出がたまりません。これだから、杉井先生の作品はやめられない。
また楽しみなシリーズが増えました。次はどのような事件が、生徒会室に舞い込んでくるのでしょうか。
語られていないキリカの秘密、ひかげとキリカの関係の変化、会長と朱鷺子さんのいざこざなど、気になることがまだまだたくさん。
早く次の巻が読みたい! 首を長くして待つことにします。


イラストはぽんかん(8)さん。カラーページでの趣のある光の使い方が好きですね。
会長のスカートが実にエロい。騙されちゃだめだ、騙されちゃだめだ……!


このあとがきには噴きました。ひかげの彼のようになれる力を秘めていると思うのですが、なる必要は全くないですね。はい。