まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

のうりん

のうりん (GA文庫)

のうりん (GA文庫)

  • ストーリー

県立田茂農林高校に通うアイドルオタクの高校生・畑耕作。
大好きなアイドル・草壁ゆかに会うため、耕作は芸能人が多く通っている東京の高校への転校を本気で画策していた。
そんなある日農林高校に転校してきたのは、なんと草壁ゆかその人で……。


農業学園ラブコメということで発売前から話題になっていた作品。
1年間農業高校を取材したというだけあって、しっかりと野菜の栽培や家畜の飼育について描きながらも、テンポのいいぶっ飛んだギャグで息つく暇もなく笑わせてくれる楽しい1冊でした。


ギャグそのものも実に愉快だったけれど、何よりその見せ方に工夫が詰まっていましたね。
文字の大きさやフォントを変えるのはもちろん、イラストの使い方がとても独特でした。
イラストと文字が一緒になって落とすというのはライトノベルならではの方法ではないでしょうか。
一部を除き、どのライトノベルでもイラストが大切であることに変わりはありませんが、イラストと本文が合わさってひとつの面白さを生み出しているという点で、この作品は特別だと思います。
またそのイラストがいいんですよ。ただ可愛いだけじゃなくて、文字と合わさったときの効果を考えてしっかり笑いを取りに来ているなあと感じました。


主人公の耕作は変態です。ええ、もう他に言いようがありません。ド変態です。
それなりの常識は持ち合わせているのにも関わらず、分かっていて変態行為を繰り返すために非常にたちが悪い。
あ、欲望に純粋なキャラは嫌いではありませんよ。むしろ大好きですとも。
王様ゲームで素足で顔を踏めと命令する主人公ってどうなんだろうと思わないでもないけど大好きです。いいぞどんどんやれ。ほとばしる情熱を存分に見せてくれ。
変態なのは何も、主人公だけではありません。
耕作の幼なじみの農、親友で優等生の継、担任のベッキー、それぞれどこかしらに突っ込みどころのあるユニークなキャラばかり。
変態がボケて変態が突っ込む、終わりの見えないエンドレスギャグでもう腹が痛い。誰か止めて。
ああ、ベッキー先生はアウトかセーフかでいえば完全にアウトだと思います。大丈夫か農林高校。


そんな変態の魔窟に転校してきた元アイドルのヒロイン・林檎が可愛くて可愛くて。
なぜか無愛想でほとんど表情を動かさず、アイドルらしく愛想を振りまくどころか悪態と毒舌のオンパレード状態の彼女ですが、そんな中で耕平への思いが見え隠れするのがとてもよろしい。
何故彼女が転校してきたのか、耕平に対して特別な感情を抱いているのか、まだ明かされていない点も多いのだけれど、そのミステリアスな部分にまた惹かれますね。
幼なじみとして対抗する農との恋のバトルにも、この先期待していきたいところ。


気付けば農業の描写についてほとんど書いていませんでした。でもそれくらい、変態ギャグのインパクトが強かったのです。
控えめに言ってもかなりの下ネタ押しですね。なかなかどぎついのからとことんお馬鹿なものまでひと通り揃っていました。
笑っているうちにいつの間にか読み終わっていたという感じ。本当に面白かったです。また楽しみなシリーズが増えました。
次の巻からは林檎の秘密が明らかになっていくのでしょうか。待ち遠しいですね。


イラストは切符さん。上でも書きましたが、可愛く見せるところでは可愛く、笑わせるところでは笑わせてくれるイラストが素晴らしかったです。
カラーピンナップで継にばかり目が行ってしまって困るのでどうにかしてください。


無精卵……その発想はなかったなあ!