まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!

  • ストーリー

高校入学をきっかけに「隠れオタク」になって清楚な彼女を作ると決めた柏田直輝は、同じクラスの長谷川翠に一目惚れする。
ところがある日、美少女ながら好みとは真逆のギャル・恋ヶ崎桃に、柏田がオタクであることがバレてしまう。
恋ヶ崎は、柏田の秘密を守る代わりにとある頼みごとをしてきて……。


第2回ネクスファンタジア大賞、金賞受賞作品。
キャッチーなタイトルと、いかにもニヤニヤできそうな内容に惹かれて手に取りました。
読みやすくてすれ違いが楽しいラブコメでしたが、非リア充の身としては結構えぐられます……。


謎めいた美少女・長谷川を好きになった隠れオタクの主人公・柏田。
爽やかイケメンだけれどオープンなオタク・鈴木を好きになったギャルのヒロイン・恋ヶ崎。
お互いの恋を叶えるために、このでこぼこなふたりが共闘する、というストーリーです。
いやあもうね、この時点でおおよその展開は見えてしまうわけですよ。
それぞれの恋が実るかどうかは分からないけれど、とりあえず協力し合う中でふたりの間の距離が縮まっていく、っていうことですよね!
分かっていても、そういう展開を望まずにはいられない。だって大好物だから!
初めは恋ヶ崎を鬱陶しく思っていた柏田、オタク趣味に否定的だった恋ヶ崎。
仕方なく一緒にいたふたりが、擬似デートやら買い物やらを繰り返す中で、いつの間にか友達になっている。
猫をかぶって接するのもいいけれど、やっぱり全部をさらけ出して接した方が、仲は深まりやすいと思うんですよ。
周りには明かせない秘密の関係っていうのも素敵。
でも、だからこそ周りからは変な目で見られるということもあって、迷惑をかけまいと身を引こうとする柏田の姿に、胸が苦しくなりました。
それだけに、恋ヶ崎のあのことばが嬉しかったですね。うわべではなく、素の柏田と過ごしてきて、それでも出てきた彼女の本当の気持ちですから。
ギャルだからと誤解されがちな恋ヶ崎ですが、本当にいい娘なんですよ。こんな女友達がいたらそれだけで十分リア充なんじゃないかな。


作者の失敗談を元にしたという、柏田の痛々しい失敗の数々が心に突き刺さります。
学級委員になった翠を陰ながら手伝って近付いた気になったり、髪をいじろうとして残念なことになったり。
恋ヶ崎の容赦ないツッコミには息苦しくなりました。
モテないオタクがリア充になろうと奮闘する、そんな必死さが、リアルに伝わってきていたと思います。


柏田と恋ヶ崎の関係はとりあえず落ち着いたものの、お話はまだまだこれからという感じ。
長谷川さんは謎の美少女のままだし、鈴木と恋ヶ崎もまだほとんど関わっていません。
この恋を成就させるために、次にふたりがどんな行動に出るのか。もしくは、ふたりの間でまた何かが変わっていくのか。
どちらにせよ、とても楽しみです。


イラストはあなぽんさん。恋ヶ崎の色んな表情がどれも可愛らしいですね。
なんといっても八重歯ですよ、八重歯! ありがとうございます!


隠れオタクって周りから分かっちゃうもんなんですか? え、ほんとに?