まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

丘ルトロジック2 江西陀梔のアウラ

  • ストーリー

街でトイレを探し、すんでのところで女子トイレに駆け込んだ咲丘。
危機から解放され個室を出たところで、幼馴染である苧環香澄と最悪の再会を果たす。
一方、歓楽街《オアシス》では《ドッペルゲンガー》を目撃して怪死を遂げる人が相次いでおり……。
相変わらずどろっとした独特の読み応えがある作品でした。
本当のオカルト的存在よりもずっとオカルトっぽい登場人物たちの感情の爆発と叫び。
正直彼らが何を言いたいのか、何に対して怒っているのか、平凡な私にはいまいち分からないのだけれど、なぜか強い圧力のようなものを感じるんですよね。
その見えないパワーにぞっとしながらも、翻弄されるのが楽しい。


今回のメインはドッペルゲンガーです。自分と同じ顔をした相手を見ると死ぬ、という有名なオカルトですね。
他の都市伝説や音楽などの話題を組み込みながら、「自分と他人」とか「個性」といったテーマへと上手くストーリーをつなげていっています。
奇人変人ぞろいの丘研のメンバーはやはり個性というものに対してそれぞれ思い入れがあるようで。
普段の和気あいあいとした雰囲気からは想像もできないほどの気持ちの高ぶりがそこかしこにあって、そのたびに改めて、人の奥深さを実感させられるような気がします。
新キャラの香澄は咲丘の幼馴染みでロックンローラー
どうしてもこういうキャラは「キレる若者」に見えてしまって仕方がないのだけれど、個性を求めながら手が届かずに思い悩むのは誰にでもありえる姿で、ちょっとだけ胸にくるものがあったりとか。
この生き様がロックなのかそうでないのかは分からないけれど、こういう生き方しかできないっていうのは、見た目よりもずっと苦しいんだろうな。


悩む人々に対しての沈丁花や咲丘の解決策は至って明快、とことん叩き潰すこと。
もはやこれは説得でも話し合いでもなくて、自分の言い分を思い切りぶつけて、相手をへし折ってしまう。
爽快でもあり、残酷でもある解決方法。もしかしたら優しいのかもしれないけれど。
揃いもそろっておかしな人間ばかりですが、やっぱりこの2人は飛び抜けて狂ってると思いますね。
特に咲丘は何が言いたいのか本気で分からない。つくづくとんでもない主人公だなあ。


読者が受け入れることをまるっきり拒否しているような作品なのに、なぜか魅力がある不思議。
芸術は爆発だって言いますけど、多分、それに近い魅力なんじゃないかと思います。色んなところが爆発してる。
惜しむらくは1巻の内容をあまり覚えていなかったことで、忘れたキャラや設定などに往生しました。
色んな方向に全力でぶっ飛んでいるので逆に内容が残りにくいのかもしれません。また読み直さないと。
ともかく、次の巻でもパワー溢れるオカルトに期待したいと思います。


まごまごさんのイラストが今回も素晴らしい。
特に表紙や扉絵の江西陀! 露出してるわけでもないのにエロすぎます。


江西陀は本文中でも安定の可愛さだったけれど、副題の意味がよく分からない……。