まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

空色パンデミック Short Stories

空色パンデミック Short Stories (ファミ通文庫)

空色パンデミック Short Stories (ファミ通文庫)

  • ストーリー

ある日景が学校に行くと、三つ編み眼鏡でセーラー服を来た結衣が座っていた。
どうやらアニメ映画を元にした空想病の発作にかかっているらしい。
今度も景は結衣の相手役に設定されているようで……?


短編集です。第1話から第3話までが1巻の頃、第4話が3巻の後の話でしょうか。
この作品でどんな風に短編を書くのかと思っていたけれど、どの話も面白かったです。


1〜3話は結衣の空想病発作の話で、その空想はどれも作中作のアニメやゲームを元にしています。
結衣が好きなアニメやゲームをネタに空想をふくらませたということなんですけど、この作中作、実際にある某有名アニメとゲームのパロディ作品です。
特に2話がひどい。『超世紀シンフォニア』なるアニメが元ですが、第一適合者だの巨人型決戦兵器だの特務機関だの新劇場版だの、もう明らかにあれ。
森崎の「シンフォはロボットじゃない」とか、「あのエンディングは捉えようによっては、最良の結末なんだ」とかの台詞が、もろに実際のコアなファンの意見といった感じです。笑えばいいと思うよ。
元ネタがあるとはいえ、設定はとても丁寧に作りこまれているし、これで長編が書けてしまうんじゃないかと思えるくらいです。ぜいたくですね。


まだ結衣が自己完結型空想病の頃の話なので、巻き込まれる景は毎回のように恥ずかしい目に。
予想のつかない結衣の言動に振り回されまくる景の姿は見ていてとても楽しいですね。
大抵は結衣がヒロイン、相手役が景、恋敵が青井に設定されているため、結衣と青井による景の取り合いが見物になっています。
空想中の結衣は本気だけれど、役者である青井はあくまで演技。
そのはずなのに相変わらず演技だと思わせないというか、もしかして本気でやってるんじゃないのと思わせる青井の態度がなんとも魅力的です。
青井可愛いよ青井。ニヤニヤが止まりません。
恥ずかしがりつつも最後はテンションにまかせてやり切っちゃう景の吹っ切れ具合にも注目。


第4話はあのメアリーが薬で幼児化する話。
素直なメアリーは可愛すぎて困ります。なんですか、新手の精神攻撃ですか! ずっとこのままならいいのに。
というか、空想病にさえかからなければ、メアリーはこのように純真無垢な女の子のまま育っていたのかもしれないんだよなあ。そう考えるとなんとも切ない気分です。
一風変わっているからなかなか気付かないけれど、やっぱり病気のことを描いた作品なんだということを改めて感じました。


短編集だったから今までのような伏線はなかったような気がするけれど、どこかに隠されていたりするのでしょうか。
というかないと逆に落ち着きませんね。探してみようかな。
これだからこの作品はやめられない。