まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

喰-kuu-

喰-kuu- (MF文庫J)

喰-kuu- (MF文庫J)

  • ストーリー

ラーメン屋でバイトをしていた戌井八千代は、突然店に現れた少女が大食いメニューを平らげるのを目撃した。
その姿に魅せられた八千代は、「俺と付き合ってくれ」といきなりの告白に打って出る。
少女・井ノ原みのりは、そんな八千代に対してとある条件を提示するのだった……。


第6回MF文庫Jライトノベル新人賞<優秀賞>受賞作。
大食いという変わったテーマを扱った作品ですが、とても面白かったです。


何かに本気を捧げる青春っていうのは熱い。
それはスポーツでも文化系のものでも変わりません。大食いという珍しい舞台であっても同じことです。
本気をなくしていた主人公・ハチが、どこまでもまっすぐに高みを目指すみのりと出会い、新たに熱意をぶつける場を手に入れる。
残してきた場所への未練や苦悩、自分が新たに見つけた場所を否定される悔しさ、それをばねに大きな目標へ向けて努力する姿の清々しさなどが、時に丁寧に、時に大胆に描かれていました。
はた目からは意地汚い行為に見えたとしても、彼らにとっては誇りを賭けた戦いなのです。
ああ、なんて爽快なのでしょう。
スポ根というのとは少し違うのかもしれないけれど、それに通じる熱を存分に味わうことができました。


ヒロインのみのりは大変魅力的です。
小動物的な可愛らしさを持っているくせに驚きの能力を秘めた大食いヒロインで、二つ名は《極大引力(ブラックホール)》。
普段のふわふわした性格と大食いに挑むときの真剣な表情とのギャップにぐっときますね。
朗らかで優しいのに時々毒舌だったりするのがまたたまりません。可愛すぎる。撫で回してもいいですか。
ハチは初めからみのりに告白していて、当然みのりはハチの想いを知っているわけで、その上でこういったやりとりを交わしているのだと思うと、もう頬が緩んで仕方がない。
恋愛方面にも期待が持てそうで何よりです。
会話も軽快で楽しかったのですが、パロディネタがちょっと鼻についたかな。
ギャグも十分に面白いので、別にネタを入れる必要はなかったんじゃないかと思いました。これはこれでいいんですけど。


心地良い読了感。また楽しみなシリーズが増えました。
次はどのような大食いメニューが登場して、戦士たちはどのように立ち向かっていくのでしょうか。わくわくです。


イラストはまりお金田さん。とにかくみのりが可愛く描かれています。頬染め最高!
欲を言えば大食いメニューのイラストも見てみたかったですね。


読んでいるとお腹が減ってくる。この餃子はぜひとも喰ってみたい。