まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき

  • ストーリー

生徒会書記の成田真一郎は生徒の悩みを解決に導く「迷わない子ひつじの会」のメンバーである。
ある時、ラブレターの差出人を探し出してほしいという相談が生徒会に持ち込まれた。
ひとりになって考えようと会議室隣の資料室に足を踏み入れた真一郎は、そこを隠れ家にしていた少女・仙波明希と出会う……。


第15回スニーカー大賞<大賞>受賞作品。
流石は大賞というべきか、安定感ばっちりの面白さでした。
基本的には読みやすいけれど、時々分かりにくい単語やネタが交じるのは愛嬌ですかね。


生徒たちの相談事を次々に解決していく、ミステリ風の短編集といった作品です。オムニバス形式っていうのかな。
探偵役は会議室の隣で他人と関わらないように過ごしている少女、仙波。
会議室から漏れてくる会話を耳にするだけであっさりと謎を解いてしまう不思議な女の子です。
自分が他人を傷つけることを恐れて人と接しようとしない彼女ですが、真一郎に付きまとわれて、嫌々ながら解決に協力することになってしまいます。
一方の真一郎は他人を助けることを第一に考え、仙波が解き明かした真実を利用して相談者を幸せにしようと努力する、仙波とは正反対のような性格をした少年です。
時にはその真実をねじ曲げてさえ当人を救おうとするお節介で、当然仙波からは嫌われています。
この凸凹コンビがどのように謎を解き、相談事を解決していくのかが楽しい物語になっています。
相談事の内容も、恋愛から、ちょっとした事件のようなもの、小説の謎解きまで様々で、毎回わくわくさせられました。
それぞれの短編が別の話のように見えて、実は前の話にも伏線を張っていたりするので、読み返すとまた新たな発見があるかもしれません。


話の進め方としては、視点入れ替わり方式をとっています。
主な語り手は真一郎、仙波、そして真一郎の書記仲間である佐々原三月の3人。
語り手が入れ替わることで、違ったものの見方や考え方、それぞれの思惑などが見えてきて面白い。
謎解きだけではなく、この変わった3人の語り手がどのように気持ちを交わしていくのかも重要な見所です。
何よりも仙波が魅力的だと思います。口では嫌だ嫌だと言いつつ結局真一郎に応えてやるあたり、なんとも可愛らしいではありませんか。
初めは謎だらけの人物に思えましたが、真一郎や佐々原に比べると一番分かりやすいのかも。
流れるような毒舌もいい。真一郎が羨ましいですね。恋愛に発展するかどうかは分かりませんが。


アペンディクス(付録)で次回予告のようなものがあって終了。
いきなり続きが気になる終わり方をしてくれました。2巻が待ち遠しいです。
いきなりコミカライズとドラマCD化はどうかと思わないでもないですけど。


イラストは籠目さん。仙波の目つきがたまらない。
あと、ほとんど登場しない中瀬華が可愛すぎて困ります。