まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

空色パンデミック(1)

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

  • ストーリー

高校受験の朝、仲西景が出会ったのは、"空想病"にかかった少女・穂高結衣だった。
空想病とは、発作を起こすと自分が映画や小説の主人公のように特別な存在であるかのように思い込み、その妄想に精神を支配されてしまう病気である。
以後なぜか結衣につきまとわれるようになった景だったが……。


今年突如現れ、ラノベファンの話題をかっさらっていった(らしい)作品。
読もう読もうと思いつつ先延ばしになっていましたがようやく読みました。


とても面白いです。しかしこの胸に残るもやもやはなんだろう。不思議な読了感でした。
あの展開から考えればこれ以上ないくらい綺麗に終わっているとは思うのですが、何か大事なことを忘れているような……そうでもないような…妙な気分です。
このもやもや感も魅力のひとつなのかな。


まず、空想病という発想がユニークですよね。
ただ1人で妄想に入って何か行動してそれで終わるだけなのかと思いきや、【劇場型】になると周りの人まで妄想の世界の住人にしてしまうし、感染爆発が起こると世界的な危機に陥るし、興味深い設定だと思いました。
空想を早く終わらせるための【役者】がいるというのも面白い。よく考えられているなあ。
ストーリーの構成も特徴的でした。
初めにラスト付近の場面を持ってきていたり、演劇部分では急にシナリオ調になったりしています。
「え?」「あれ?」という想定外の展開が続くのでなかなか気が抜けません。
その繰り返しの結果がもやもやの原因なのかもしれませんね。


結衣かわいいよ結衣。明るく振る舞いつつも時々見せる弱さが魅力的です。
空想病感染者であるが故の消せない思い。理由なく自分を好きになってくれる人がいないということ。

「だから、私のことを好きになってよ」

この言葉は胸を打ちました。
普通の告白のようにも見えますが、とても切ない台詞だと思います。
青井や森崎など、サブキャラたちも魅力に溢れていましたね。
特に青井は最初から最後まで影の主役だったような感があります。
最後の方でもしっかり働いていたわけですし。


しかし第6章にはやられました。綺麗に騙された。
いくらなんでもちょっと現実味に欠けるかなあとか、少し展開が唐突じゃないかなあとか、そんなことを考えてる時点で既に罠にかかっていたとは(笑)
見事というほかありません。完敗でございます。


とか思っていたら最後の1文。なんだこれ! 全部持って行きやがった!