まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』感想

やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい (MF文庫J)

ストーリー
人類が圧倒的な銃の力でファンタジー種族を滅ぼしゆく時代――エルフの村で育った人間の少年、ガーディは、村の掟を破ったことで追放され、金貨姫フローリンが治めるイントラシア領に身を寄せる。剣も槍もロクに扱えず、秘められし権能すらも“究極のお人好し”という戦乱の世ではどうしようもない有様のガーディ。けれど、エルフの村でバカにされながらも培った知恵と経験、そして誰もが呆れた彼の“優しさ”が、過酷な戦争の中で空前絶後の伝説を生み出していく――のちの世で大軍師として語り継がれる少年の異端の英雄譚、登場!

エルフに育てられた人間の少年がお姫様の側仕えとして戦場に立つ戦記ファンタジー
一介の少年が成り上がっていく王道の戦記モノに、ちょっとした魔法や能力、エルフにオークといったファンタジーな要素が混じって楽しく読めるストーリーでした。
もっとも、まだまだ序盤もいいところなので本格的に話が盛り上がるのは先になりそう。


後に大軍師と呼ばれるらしい主人公のガーディですが、現状では(人間にしては)弓が上手いだけの少年です。
一方内面はといえば、人としてはそれなりに特殊な環境で育ったためか、どこか飄々としていて、まともそうでいてやっぱり変わり者な感じ。
今のところでいえば、特別頭が切れるわけでもなく、圧倒的に強いわけでもない。そんな彼の武器は「お人好し」。
他の人間からは見向きもされない羽妖精・ピクシーたちと懇意になった彼が、妖精たちとともに戦場で見せた思わぬ戦い方には胸が踊りました。
戦上手の敵王との戦いの中で多くを吸収したように思えるガーディ。彼の今後の成長が楽しみでなりません。


イラストは片桐雛太さん。背中合わせの主人公とヒロインっていいよね。
見開きも何枚かあって見応えのあるイラストでした。


一番かわいいヒロイン・母説。

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…8』感想

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…8 (一迅社文庫アイリス)

ストーリー
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。魔法省を舞台にしたゲーム続編で、出戻り令嬢カタリナは闇の力を手に入れて破滅する!ーーそう知って全力でバッドエンドを回避するつもりだったのに、気付けば闇の使い魔ポチに続き、闇の契約の書の所有者に!? 破滅回避方法不明のまま、王宮で開催される他国との交流会に参加することになってしまい…!? あれ? これってゲームのイベントじゃないわよね? 大人気破滅回避ラブコメディ、第8弾登場★

ここ最近、超遅ればせながら悪役令嬢ものにハマりまして、「なろう」で有名どころを読み散らかしていたのですが、中でも一番ドハマリして書籍版からコミカライズまで全部集めたのが今作。
ということで8巻感想と銘打ってはおりますが、前回の更新に引き続きシリーズまとめての感想もさくっと。


乙女ゲームで必ずバッドエンドを迎えてしまうライバル役の悪役令嬢・カタリナに転生してしまった主人公が、幼少期からその破滅フラグを回避するために奮闘する(逆)ハーレムコメディ。
なんといっても、前世で猿と呼ばれたポンコツ体育会系ド庶民の魂を引き継いだカタリナが、天然のタラシぶりを発揮して無自覚に周囲の人々を(男女問わず)恋に落としていくのが楽しい!
元々の乙女ゲームの攻略対象たちだけでなく、元々のゲームの主人公や他の貴族令嬢たちまでがカタリナにゾッコンというハーレムぶりなのだけれど、それが少しも不思議ではないくらい魅力的なイケメンヒロインっぷりが痛快なのですわ。
公爵令嬢なのに、庶民にしても突飛な発想でやたらアグレッシブな行動力を発揮するもんだから単純に見ていて面白いし、他の人のために簡単に危険に足を突っ込むもんだから守ってあげなきゃ感が凄いし、底抜けに優しさを振りまくのに周囲からの好意には鈍感なあたりにハーレム王としての資質を感じるんですよね(笑)。


では彼女に惚れてしまうキャラクター陣はどうかといえば、これまたなかなか魅力的な面々。
ゲームでの攻略対象のジオルドやキース、アラン、ニコルといったイケメン軍団。メアリにマリア、ソフィアといった令嬢たち。みんなそれぞれの良さはあるんですが、個人的にはやっぱり女性陣を応援したくなってしまうなー!
いや、ジオルドとの一方的なラブコメっぷりももちろん楽しいんだけれど、令嬢組が単純にヒロインとして素晴らしすぎてね……。カタリナがイケメンなので隣にはマリアとかソフィアみたいな正統派ヒロインが寄り添っているのが似合っちゃうんですわ。もちろん愛に貪欲な腹黒メアリさんも大好きです(笑)。


8巻では近隣の王侯貴族が集まる会合に公爵家令嬢として参加することに。最近攻め攻めなジオルドと、そんな彼にタジタジになりつつも全く恋愛には発展しそうにないカタリナの凸凹カップル感は相変わらずで笑えてしまいます。
いや今回はジオルドにもかっこいい見せ場があったし、普通ならあそこでぐっと距離を縮めるところですけど、それ以上にマリアを助けに入るカタリナのイケメンぶりの方が印象に残ってしまうのだからジオルドも不憫というかなんというか。結局縮まったのはジオルド→カタリナの思いとマリア→カタリナの思いばかりで、当のカタリナは無自覚という。うーむ不毛だ(笑)。
そしてこんな事件がありながら「大したこともなく」とか暢気なことを言ってのけちゃうカタリナ様の大物感よ……メンタル強すぎる、これは勝てんわ。


一気に読んできたので新刊が出るまで待たなきゃいけないのがめっちゃ辛い! 魔法省のお仕事とか、カタリナと闇の魔法書のこととか、気になるあれこれがいっぱいあるので早く続きが読みたくて仕方ありません。
それにしてもアニメ前に読めて良かったな。動いて喋るカタリナ様ほんと楽しみにしてますよ。


イラストのひだかなみさんによるコミカライズ版も素晴らしいのでぜひ。

『薬屋のひとりごと8』感想

薬屋のひとりごと 8 (ヒーロー文庫)

ストーリー
毒で体調を崩した姚が医局勤めに戻れるようになった頃、猫猫のもとに大量の書物が届いた。送り主は、変人軍師こと羅漢。碁の教本を大量に作ったからと、猫猫に押し付けてきたらしい。興味がないので売り飛ばそうかと考える猫猫の考えとは裏腹に、羅漢の本によって、宮中では碁の流行が広がっていくことになる。一方、壬氏はただでさえ忙しい身の上に加えて、砂欧の巫女の毒殺騒ぎや蝗害の報告も重なり、多忙を極めていた。そんな中、宮廷内で碁の大会が企画されていることを知った壬氏は、羅漢のもとに直接交渉をしかけに行く。開催場所を壬氏の名前で提供する代わりに、さぼっている仕事をこなすように説得するのだが――。

またしばらく更新が空いてしまいました。お久しぶりです。
最近またラノベ熱がぶり返してきておりまして、ずうっと積みっぱなしだった『薬屋のひとりごと』をふと思い立って読みはじめましたらば、またこれがエラく面白くて一気に全部読んでしまったので、まとめて感想を書いちゃおうと思った次第でございます。
ということでタイトルには「8」と書きましたが、シリーズ全体の感想になっているのでご了承をば。


物語のジャンルでいうと……難しいですね、中華ミステリー風日常ドラマ+ラブロマンスといったところですか。謎解きモノではあるんだけれどもミステリーというほどそっちに特化しているわけでもなく、かといって恋愛がメインでもなく。では何かといえば、毒をこよなく愛する変人ヒロイン・猫猫が突飛な行動で周囲を驚かせていくのをひたすら愛でる物語なのではないかと思います。
そう、今作の何よりの魅力は主人公の猫猫にあります。彼女は高級妓楼にほど近い薬屋の娘として生まれ、毒や薬(だけ)に深すぎる関心を持った根っからの変わり者。
そんな猫猫が人さらいに遭い、後宮の下女として働きはじめるところからお話が始まるわけですが、とにかく徹底して描かれるのが猫猫の特異さ。
義父ゆずりの広範な知識と毒や薬に関する深い造詣を用いて後宮内で起こる事件を次々に解決に導いていく姿。天女のような顔面を持つために誰しもが見惚れてしまうという謎の宦官・壬氏に対しても、顔を赤らめるどころか「毛虫でも見るような目」を向ける姿。金や昇進には欠片も興味を向けず、貴重な薬草や毒物に対してだけ異様なこだわりを見せる姿。
他の下女から嫌がらせを受けても全く気にしないけれど、人の命がかかった時には修羅のように激怒する格好良い姿。
いやあ、僕はイケメンヒロインが大好物なんですよ! 水晶宮での猫猫には痺れました……。
後宮でも外廷でも花街でも、どこの人々の中でも違う、そんな特別な姿を見ているだけで面白く、ワクワクさせられてしまうのです。


下女として2年間の奉公が終わればそれでいいと思っていたのに、自分の思う通りに行動した結果なぜか様々なお偉方のお気に入りになっていってしまう猫猫。
せっかく後宮を出てもまた壬氏の下女として雇われてしまったり、とある派閥に誘拐されたり、異国への旅路に付き合うことになったり、そしてそんな日々の中で壬氏の秘密を知ってしまったり。
特別な才能を持った人物はやはり特別な立場を得ていくもの。やっぱり猫猫が周囲に認められていくのを見ると嬉しくなってしまいます。ただ安寧の日々を過ごしたいだけ、という当人には申し訳ないけれども……。


さて8巻の話ですが。7巻での事件を経て、同僚の姚や燕燕と友人といってよい仲になった猫猫にほっこり。意外なほどちゃんとした友人関係を築けているようで何よりです。姚はともかく、燕燕も猫猫に負けず劣らずの変人ぶりですからね……。そう、友人といえば、小蘭のことも気になります。再登場してくれないかなあ。
一方、世間では羅漢主催の碁大会が開催。羅漢に勝ったら願いを叶えてもらえるという噂も立つ中、対決相手として名乗りを上げたのはやはり。
いやあ、恋愛がメインではないと書きましたけど、やっぱり猫猫と壬氏の二歩進んで一歩下がる関係性は大いに気になるところです。今回ラストで結構な「王手」をかましてくれた壬氏ですが、あとは猫猫がどう出るか。恋愛ごとには全くの無関心を貫いている猫猫だけに、そここそが最大の問題なのですが……。


今作は「匂わせ」の描写が多くて、この一文はつまりどういうことなのだ、と、読んでいて結構頭を使います。もちろんそこがオシャレなところだったりもするんですけども、二度三度と読み返すことでまた新たな発見があるような気もするので、またじっくり頭から読みたいですね。
あとなぜかコミカライズが2種類出ているのですが、熱に浮かされたように両方全巻ポチって読みました。じっくり描くことで絵の力を感じることができるビッグガンガンコミックス版と、原作に沿ったエピソードが豊富に読めるサンデーGXコミックス版、どちらもそれぞれの良さがあってオススメでございます。
ともあれ、次の巻が待ち遠しいですね。刊行はずいぶんスローペースのようですが、この完成度なら仕方ないかな……とも。


四夫人なら誰推し? ぼくは里樹妃ちゃん!