まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『弱キャラ友崎くん Lv.6』感想

ストーリー
文化祭を目前に控えた11月。俺、友崎文也は日南との会議を再開し、また課題にとりくむ日々を送っている。そんなとき、日南が俺に尋ねる。「あなたは、誰が好きなの?」――それは、俺がひたすら保留にしてきたこと。彼女をつくるという目標に向けて、避けては通れない問い。けど、俺に誰かを選ぶ権利なんてあるのだろうか? 成長してきた実感はあるけれど、それでも、心の奥底で俺の弱キャラ精神が言うのだ。――選ばれるはずのない俺が、誰かを選ぶなんておこがましい、と。大ヒット人生攻略ラブコメ、第6巻登場!

文化祭実行委員としてクラスの中心として奮闘しつつ、日南からのインスタ写真撮影クエストを達成していく友崎くん、の巻(まき)。
上位カースト勢との友人ぶりもだんだん板についてきて、今度は実行委員ですか。いよいよ本格的にリア充への道を歩みだした感がありますな。
恋愛方面も少しずつ動きがあって、おやおや(ニヤニヤ)としていたら、ラストに全部もってかれましたよ。うおおー! 好きじゃ、お前が好きなんじゃー!!


日南から課された指令は、インスタ用の写真を指示に沿って撮影すること。そして付き合いたい女の子を「2人」決めること。
いやあ、同時に複数攻略する方が恋愛の難易度は低いっていう、その持論は分かりますけどね。それを恋愛初心者の高校生に求めちゃいますかね。やっぱリア充の考えることってわかんねーわ! フケツ、フケツよ!
いや、そもそも日南さんは恋愛経験あるんでしたっけ? 見た感じではなさそうだけど。高2にして既に酸いも甘いも噛み分けてそうな水沢きゅんが言うならまだ理解できますけど、日南はどうしてここまで恋愛に対してシビアになれるのやら。


日南から攻略対象として挙げられた5人についてちょっと考えてみましたけど。
泉はねー。めっちゃ可愛いですけどね。ぶっちゃけヒロインとしてはすげー好きですけどね。中村と付き合ってさえいなければなあ。いや略奪愛は無理でしょ……ハードル高杉晋作ですわ……。
たまちゃん。前巻を経て、だいぶ友崎との距離は縮まった感じがあります。でもやっぱり楽しい友達っていう印象。
日南はまあ、おいておこう……泉よりもキツいわ。でも「私?」って小悪魔的に聞いてくる日南はやっぱりゾクッとくるほど魅力的で悔しい。いつかぎゃふんと言わせてほしいです。友崎のレベルが80くらい上がった頃に……。
菊池さんは今巻のヒロインその1と言えるでしょう。友崎を通して、彼女が表舞台に上がってきたことは本当に嬉しく思います。で攻略対象としてなんですけど、この子わりと序盤から落ちてるよね? ね? たぶんこの子と付き合ったら一番幸せな気がする……のは確かなんですが、なんというか、菊池さんエンドを迎えるならばここまでリア充になる特訓をする必要はなかったんじゃないか感もあって、今作で選ぶヒロインとしては微妙にも思えてくるんですよね。彼女を切るのはめちゃくちゃ胸が痛みますけどね……。
それで、残るは今巻のヒロインその2・みみみなんですけど。彼女は本当にいいヒロインですよね。オタクは距離感の近い女子に弱いんですよ。僕は詳しいんだ。友崎への「ブレーン」呼びたまらん好き。言動のそこここに友崎を気にしてるのがにじみ出ているのすごい好き。で、今回のラスト。あれはずるい。ずるいでしょ。これもうみみみエンドでいいでしょ。いやーみみみ推しで良かったわ。僕の脳内では既にリンゴーンって鐘が鳴ってますよ。最高です。ありがとうございました(完)。


……と、いう感じなんですが。肝心の友崎はそれ以前のところで引っかかっていたようで。
いやー分かりますよ。友崎の非リア思考、すんごい理解できますよ。なんなら水沢きゅんに直接叱られてる感覚でしたよ。自信を持つってのは怖いことなんだよ。
ここで「お前みたいなリア充イケメンにはわかんねーよ」とか思っちゃうから駄目なんでしょうね。辛いな。リア充になろうとするって辛いよ。僕は永久にラノベの世界に引きこもっていたいよ。
でも我らが友崎くんはそこから一歩抜け出す勇気を持てたんですよ。リア充になるために。偉いよ。誰だってぬるま湯に浸かっていたいもん。
うっかり長くなってしまった。次回、運命の文化祭編、大きく人間関係が動き出す……か? といったところでしょうか。いやはや大期待です。楽しみにしています。


水沢きゅんのナンパテク恐るべし。

『常敗将軍、また敗れる』感想

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

ストーリー
「貴様はこれまで父ローディアスと二度、長兄シャルクとは一度戦っているはず。そして、どの戦にも負けた」
ティナの声が少し弾んだ。
「しかし、まだ生きている」
世界最強の「ヴァサームントの騎士団」当主の娘、ティナは初陣にて『常敗将軍』と渾名される異端の英雄、ドゥ・ダーカスと出会った。陰謀に満ちた戦乱の世界で破格の生き様を見せる英雄ダーカスと、その姿を追いかけるティナや姫将軍・シャルナら魅力的なキャラクター達が織り成す一大ファンタジー戦記!

第11回HJ文庫大賞<大賞>受賞作品。「常敗将軍」と揶揄される異端にして破格の英雄が敗北必至の戦場を駆け抜けるファンタジー戦記。
直接的な武勲や計略の凄さではなく、伝説の傭兵としての生き様を見せることで主人公を主人公たらしめている、わりと見ないタイプの戦記モノかなと思います。
とにかく負けまくるのでともすれば格好悪い主人公だとさえ思えてしまうけれど、最後に全ての真意が明かされるとその働きぶりに感心してしまう。構成の妙を感じる1冊でした。


主人公・ダーカスは20年もの間戦場に立ち、そして敗北し続けながらも生き延び続けてきた歴戦の傭兵。
そんな彼が新たに託されたのは、隣の大国から侵攻された小王国ヘイミナルの救援だった!
いやあ、常敗将軍とか言ってもなんだかんだでカッコよく決めてくれるんでしょとか思っていたんだけれど、この男本当に負けまくる。
まず策を献上しても受け入れられないし、局地戦でも負けるし、民の犠牲だって出してしまう。多分何かの狙いがあってこんなことをやっているんだろう、そう予想はつくものの、仲間たちにすらその狙いを明かさないもんだから周囲の気持ちも離れていく。
そんなわけで、終盤になるまでのダーカスはわりとガチで魅力を感じない主人公でした。むしろ、剣技冴える新人少女傭兵のティナや、若手の傭兵団を束ねるアイザッシュらの方がよほど魅力的に思えます。


ダーカスが何をやっているんだかさっぱり分からないままにやってくる王国存亡の時。
ラストもラスト、全ての決着がついてから、ようやく彼の真意と目的が明かされる。
正直なところ、やっぱり「ダーカスすげー!」という感覚はあまりなくて、「なるほど、こういう主人公なのね」という妙な納得感というか、そういう気持ちの方が強かったです。これが、20年間生き延びてきた傭兵の戦い方なのかと。
ある程度の犠牲は仕方ないと割り切ってしまう姿勢など、見ていてスッキリしないことも多いけれども、どんなことをしでかしてくれるのかワクワクする主人公でもあります。
旅の仲間も増えたことですし、今後の話がどうなっていくか見ものですね。個人的にはシャルナの活躍を楽しみにしています。


イラストは伊藤宗一さん。ヒロインは可愛らしく、男性陣は荒々しく。迫力のあるイラストでした。
マルハルドの表情ときたら(笑)


ファンタジー戦記を名乗っておきながら地図のひとつも載せないとは何事か!(戦記ラノベ読み過激派)

『三角の距離は限りないゼロ』感想

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

ストーリー
人前で「偽りの自分」を演じてしまう僕。そんな僕が恋したのは、どんなときも自分を貫く物静かな転校生、水瀬秋玻だった。けれど、彼女の中にはもう一人――優しくて、どこか抜けた少女、水瀬春珂がいた。「一人」の中にいる「二人」……多重人格の「秋玻」と「春珂」。僕は春珂が秋玻を演じる学校生活がうまく行くように手を貸す代わりに、秋玻への恋を応援してもらうようになる。そうして始まった僕と「彼女たち」の不思議で歪な三角関係は、けれど僕が彼女たちの秘密を知るにつれて、奇妙にねじれていき――不確かな僕らの距離はどこまでも限りなく、ゼロに近づいていく。これは僕と彼女と彼女が紡ぐ、三角関係恋物語

鷺宮先生の新作。しかも青春学園恋愛もの。これは読むしかない、そう、当然読むしかない。二重人格ヒロインというのが多少引っかかったが(理由は後述)、それにしても読まない理由がない。
期待に違わず、運命的な出会いに始まり、秘密の共有と協力関係、そして告白に至るまで、甘酸っぱい片思いときゅんと胸を打つ切なさとを存分に詰め込んでノックアウトしてくれる素晴らしい青春恋愛ストーリーでした。素晴らしい。スタンディングオベーションです。


本当の自分を隠し、相手に合わせてキャラクターを演じ分けている主人公の矢野。そんな彼が不意打ちで素の姿を見せてしまい、恋に落ちた女の子・秋玻は、実はもう一人の人格・春珂と身体を共有する二重人格の持ち主だった……。
なりゆきで、何かとドジな春珂が秋玻になりきるための手伝いをすることになるのだけれど、お互いに秘密の姿をさらけ出しあった上で、好きな女の子の手助けをするというのは恋愛ものとしてベタながらも鉄板の展開といえましょう。
その上、人格の片割れである春珂に、片割れの秋玻との恋を応援してもらうというんだから胸キュンポイントは最高潮。いやだってほら、ラブコメでよく友達の恋の応援をしているうちに~パターンってあるじゃないですか。その上相手が恋しているのはもう一人の自分なわけで、そりゃもう春珂だって意識せざるを得ないし、なんというか最の高ですよ……。
矢野は矢野で、秋玻は好きな人で、春珂は大切な友人で、と頭では分かっていても見た目が一緒だからどうしてもあんなことやこんなことを思ってしまって自己嫌悪しちゃって、とかわかるーめっちゃわかるー(したり顔で深く頷く)。そんな微妙な間柄でいて、でもこじれない。この絶妙な三角関係の構築ぶりには、まったく見事というほかありません。


話は変わりますけど、二重人格ものって僕はちょっと苦手です。なんでかっていうと、必ずといっていいほど、人格のうちの誰かが消えるとか消えないとかの話になるからです。
人格が消えるっていうのはつまり、一人のキャラクターの命が失われるということです。基本的にヒロインが永遠にいなくなるタイプのお話が苦手ですし、そうなるまでにお話が自然と暗い方向へ寄っていってしまうのも好きじゃありません。
しかしその点において、岬先生のバランス感覚は非常に僕好みでした。危機感や焦燥感を煽りつつもきちんと希望を持たせてくれるし、決して暗くなりすぎず、誰もがしっかりと一歩踏み出した上で、最終的にはこういった顛末へと持っていく。とことん切ない方向へ舵を切る作品もある中で、作風なんですかね、岬作品はやっぱり好きだなあと感じさせてくれました。
エピローグは本当に反則級でしょう! 完全にやられましたわ。なんてずるいヒロインなんだ……!
なんと続刊の発売も決まっているとのことで、楽しみでなりません。10月とかめっちゃ遠いな! でもじっくり書き上げてほしいですね。待ってます。


イラストはHitenさん。前作に引き続きの担当ということでいやはやホント、ため息の出る透明感。
243ページの春珂の表情が白眉でした。


前作だけでなく、デビュー作とも繋がりがあったんですね。未読なので読もうかな。