まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

魔境戦区のナイチンゲール

魔境戦区のナイチンゲール (角川スニーカー文庫)

魔境戦区のナイチンゲール (角川スニーカー文庫)

ストーリー
“神”が医術を禁じた《魔境大陸》で、お尋ね者の“医術師“として活動するカルマ。
彼はある日、往診先の西の果てで、武器商人の少女サレナと出会う。
その悪どい商売に幻滅するカルマだったが、サレナのキャラバンは裏の顔を隠し持っていて……。



医療が神によって厳しく取り締まられている世界で、さまざまな種族の民のため違法医療に力を振るう「医術師」と「看護士」たちの魔法×医療ファンタジー。
面白かったです。悪魔の力を借りて医術をおこなう主人公たち「術式戦闘執刀医」や、武器商人に見せかけた医療従事キャラバンを率いるヒロインなど、神による医療支配に抗う人々がとても格好良いですね。
登場人物それぞれの、性格や口癖といったキャラ付けが、どれも不思議と魅力的でした。


《医神》アスクレピオスを奉じて中央都市に覇を唱える団体「天の杯」によって医療が独占され、他の者による医療が固く禁じられている《魔境大陸》。
医術と技術の独占によって都市が栄える一方、都市の外の人々はまともに医療を受けることもままならず、高い薬代に汲々とする毎日。
そんな世界で、「天の杯」から抜け出し、お尋ね者となりながらも人々に対して医療をおこなっているのが、主人公・カルマたち黒の医術師です。
《痛覚》《神経》《血液》などの特化術式を用いて患者を治す彼らは、同時に皆が凄腕の戦士。その身ひとつで大陸を渡り歩き、病んだ人を種族に関わらず治し、天の杯から狙われては戦い、そして彼らも治す。ただ人々を救いたいから、それだけで進む孤高の生き様が実に格好良い!
一方、ヒロインのサレナ・ナイチンゲールは、表の顔は武器商人、裏の顔は民間医療キャラバンの婦長、そして手にはフリントロック銃という異色のキャラクター。
まともに物資もない中で、傷を負った人がいればたちまち野戦病院を開いてみせるその働きっぷりは、これまた大変に格好良かったです。
そんなカルマとサレナが出会って物語が始まるわけですが、このふたりのやりとりがめちゃくちゃ良い! やりとりの最後、お約束になっているサレナの「ぎゅ」に毎回きゅんとしちゃいました。なんだこの微笑ましさ満点のコンビは……!


囚われの身となっていた黒の医術師、人狼族のヘッジと吸血鬼のディディ。泳げない人魚族のジョロリーと、彼女に付きそう魔神・デカラビア。
順調に仲間を増やしつつ、しつこく狙う天の杯の軍医と戦いを繰り広げるカルマたち。
戦闘執刀医の術式は強力だけれど、みんな代償の呪いを受けていて、特にカルマはそのせいで常にギリギリの戦いをしていて、見ていてなんとも危なっかしい。だから、彼の隣で見守ってくれるサレナとの出会いは、とても貴重なものだったと思うのです。
戦いの末、なんとか仲間を取り戻した一同ですが、神の支配体制は予想以上に強く世界を覆っている様子。
まさかのクトゥルー要素もチラホラ出てきて、これから何がどうなるのかまるで予想が付きません。続きが楽しみなシリーズですね!


イラストははる雪さん。表紙のサレナさん、目つきが鋭くて素敵です。
一方のサービスシーン……うむ、いい身体つきだ。


ジョロリーがやたら可愛いのでもっと出番を!