まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

甘城ブリリアントパーク1

ストーリー
謎の美少女転校生・千斗いすずにマスケット銃で脅され、遊園地デートをすることになった可児江西也。
しぶしぶ承知した西也が連れられた先は、ダメなデートスポットの代名詞として名高い「甘城ブリリアントパーク」だった。
そこで引き合わされた支配人の少女・ラティファから、滅亡寸前の遊園地を立て直してほしいと頼まれる西也だが……。



話題性に釣られて手に取りました。賀東先生の作品を読むのは初めてなのですが、面白かったです。
頭は切れるけれど俺様な少年が、魔法の国の住人によって経営されている遊園地の廃業を防ぐため、2週間で10万人の入場者を集めようとするお話。
こうやって文字にすると突飛な設定に見えますが、なかなかどうして、寂れた遊園地にどうやって人を呼ぶかというあれこれの工夫にわくわくしたり、なかなか目標に届かない状況に焦ったりと、思わずストーリーにのめり込んでしまうような内容でした。
文章は読みやすいし、ギャグあり、適度なシリアスあり、盛り上がるところではきっちりと盛り上がってくれていて、読了後の満足感もあると思います。


キャラクター陣は独特ながら、それぞれ魅力がありました。
まずは西也ですが、いわゆる「デキる男」なのに嫌味がないという、不思議な主人公ですね。多少残念な部分があるから、それで許せてしまうのでしょうか。あまりに完璧であるよりも、弱みやダメなところのある方が私は好きです。
物事に本気になって取り組む姿勢もいいですね。動機はともかく、一度引き受けた仕事はどうやってもやりきってみせるという、強い意志が感じられるキャラでした。
遊園地のために働く姿を見ていると、学校で孤立しているのがむしろおかしく思えてくるほどです。こんなにいい奴なのに。
ヒロインは、いすずとラティファ、おまけでミュース、といったところですが、やっぱり個人的にはラティファ様が一押し!
ああラティファ様可愛いよ。薄幸ヒロインラティファ様可愛い。リアルに魔法の国のお姫様やってるとか、もう最高じゃないですか。
西也じゃなくても、この子のためになら何か働いてあげたくなるし、守ってあげたくなる。この子の笑顔が見たい。そう思わせてくれるヒロインですね。
表紙で西也と一緒に描かれているのはいすずですが、彼女はヒロインというよりも、西也のパートナーという立場にいたような気がします。もちろん、今後少しずつ関係が変わっていくのかもしれませんけれど。
忘れてはならないのが、モッフル、マカロン、ティラミーのマスコット3人衆ですね。
本物の妖精なのに誰よりも人間くさい(というよりオヤジくさい?)彼らのやりとりは、いちいち面白かったです。
特にモッフルは、物語の中でも屈指の重要人物になりつつありますね。頑固だし沸点低いし、西也との相性も決していいとは言えませんが、いすずとはまた少し違う意味で、西也の大切なパートナーになってくれそうな予感がします。


悪の帝国とのバトルがあるわけでもないのに、終盤の必死の追い上げの場面は、熱く胸を焦がしてくれました。
明るい終わりを迎えつつも、全部が全部明るいわけではないというあたり、上手いですね。今度こそは何もかも完璧で、全員が幸せになれる終わりを見たいと思わせてくれます。西也自身にも、何やらいわくがありそうな気配ですしね。
とはいえ、基本的なスタンスは楽しい話で、次は「ドタバタな日常」を描くということですから、気楽に構えて、思い切り笑わせてもらいたいなと思います。
ラティファ様とのニヤニヤシーンがあるといいな! 楽しみです。


イラストはなかじまゆかさん。女の子がひたすら可愛いですね。モッフルたちも可愛いけれど、まあ、どうでもいいか。
見開きページが印象的でした。細かく見ると手が込んでますね。


ティラミーの私生活が気になる。パッフってなんだろ!