まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

美少女を嫌いなこれだけの理由

美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫)

美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫)

  • ストーリー

完璧な外見と不思議な能力を持つ種族「美少女」が人間と共存する世界。
高校生・亜麻野雄介は、ある日唐突に二人の「美少女」の訪問を受ける。
熱心な説得を受け、また報酬につられて、田舎町の「簡易美少女局」のサポートマネージャーに就任するが……。


第2回このライトノベルがすごい!大賞栗山千明賞>受賞作品。
美少女というものを逆手に取って設定付けた、普通の萌えでは終わらないユニークなドタバタコメディです。


美少女。吸血鬼や学級委員などの属性を持った可愛い女の子……の見た目を持つ種族。
しかしれっきとした種族だけあって、見た目はみんな若い女の子でも、中身はしっかり老若男女、そう、「老」若「男」女が揃っています。
金髪ロリ吸血鬼のサブリナ、愛称サブさん、40代男性。
眼鏡学級委員の五郎八(いろは)さん、年金受給者の男性。これ、表紙のふたりです。ちょっと待て夢が壊れる!
特にサブさんは口調もはすっぱで、いかにもその辺の中年男性という感じ。
イラストが出てくるたびに(またこのイラストが素晴らしく可愛いので)惚れてしまいそうになるのですが、あくまで中身はおじさまなのです。
でもイラストがあるとついついパンツを見てしまう。おへそを見てしまう。そしてやっちまった感に襲われる。
作中にとてもしっくり来る表現がありました。「コントで女装したお笑い芸人のパンチラなんかと共通している」。ああ、まさにこれだ。
もう見た目さえ可愛けりゃ中身なんてどうでもいいんじゃないかなと思ってしまう。なんて罪な存在なのでしょうか、美少女ってやつは。
ちゃんと中身が女の子の美少女も登場するのでご安心を。


そんな美少女たちが集まって、田舎で何でも屋を経営していくのだけれど、親局や中央のせこいいじめに遭って苦難の連続。
仕事が止められたり、突然監査が入ったり、やっと入った仕事の邪魔をされたり。
でもその中で、新しい美少女と出会って、いつの間にか仲間になっていたり。
監査する側とされる側、にっくき商売敵など、いがみ合いの関係にあった美少女たちが、何度か一緒に過ごすうち次第に仲良くなっていく様子にほっこりしました。
個人的に推していきたいのは、なんといってもサブさんと監査官・葛雛さんのコンビですね。
いくつも年下の葛雛さんに想いを寄せてしまった悲しき中年・サブさんの不器用なアプローチが実にこそばゆい。
無表情で考えの読み取れない葛雛さんですが、ときどき思わせぶりな発言があって、そのたびに舞い上がってしまうサブさんにまたニヤニヤしてしまいます。
しかもこれ、見た目は美少女同士なんですよね。そう、言ってしまえば百合なんですよ。そうでしょう? 異論は認めません。


美少女って素晴らしい。キャラの魅力が際立つ1冊でした。
でも唯一、主人公だけはどうも好きになれませんでしたね。文句を言ってばかりいるわりに金に意地汚いのはちょっとどうかと。もっと他人に優しくなりませんか。
コメディもラブも楽しいし、バトルの描写もなかなかの迫力。色んな楽しみ方ができる作品だと思います。
今後の展開も気になりますね。続きが楽しみです。


イラストは黒兎さん。上にも書いたように本当に可愛らしいイラストで、本文とのギャップに思わず血の涙が。
赤面サブさんがたまりませんです。ごめん、めっちゃ萌える。


ポッポ焼きに驚いて著者紹介を見て納得。なるほど、舞台は新潟県ですか。