まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『聖剣学院の魔剣使い』感想

聖剣学院の魔剣使い (MF文庫J)

ストーリー
最強の魔王レオニスは、来たるべき決戦に備え自らの存在を封印した。だが、1000年の時を超えて目覚めたとき、彼はなんと10歳の少年の姿に戻っていた!「なんでだ!?」「君、どうしてここに閉じ込められていたの? もう大丈夫よ。お姉さんが守ってあげる」。<聖剣学院>に所属する美少女リーセリアに保護されたレオニスは、変わり果てた世界に愕然。未知なる敵<ヴォイド>、<第〇七戦術都市>、武器の形をとる異能の力――<聖剣>。聞き慣れない言葉に戸惑いつつも、彼は<聖剣学院>に入学することに。魔術の失われた未来世界で、最強魔王と美少女たちの織りなす聖剣と魔剣の学園ソード・ファンタジーが幕を開ける!

志瑞祐先生の新作ファンタジーブコメ。前作と似たようなタイトルだなあとも思いつつ、自分の得意武器で勝負していくぜ感があっていいですね。
さすがの安定感で読みやすい。ラブコメ要素盛り盛りで、ファンタジーは中二心満載に、楽しく描いていたと思います。
中身は魔王の10歳男子に使役されるヒロインという構図が背徳的でGood!


1000年前、勇者に追い詰められ自らを封印した伝説の魔王レオニス。満を持して復活を遂げた彼はなぜか10歳の少年の姿に!
遺跡の中からレオニスを発見した少女・リーセリアについて外に出ると、そこは魔術や魔物の存在が忘れ去られ、新たなる脅威<ヴォイド>と人類が戦いを続ける世界だった……。
ということで過去からの転生モノですね。前世が魔王という点もなんとなく前作を彷彿とさせますが、今回は初めから自覚的なのが違うところかな。
レオニス君、魔王としてまた世界征服を企んでいるわりにお姉さんたちのおっぱいに弱かったりして、正直魔王感ゼロ(笑)。
ただいざ本気を出せば、力が弱まっているとはいえ最強であることには変わりなく、無双感が楽しいバトルでした。


ヒロインのリーセリアは確かな剣の腕を持ちながら聖剣の能力に目覚めることができずにいる少女。
とある理由からレオニスの眷属として使役されることになるのだけれど、ラブコメ的にとてもおいしい関係ですねこれは。
もともと無防備なところがあって(相手が年下の少年だからかもしれないけど)挿絵のタイミングには困らないヒロインなのですが、眷属になってますますそれが顕著に……。
敬語だけれど慇懃無礼なレオニス君10歳におねだりしちゃうお姉さん(推定15歳)、危険な香りがしますね。ワクワクが止まらないぞ!
学院でリーセリアのチームに集まっているのは、彼女の他にも何かと訳ありのヒロインたち。
落ちこぼれチームと揶揄されるような彼女たちが、レオニスの登場によってどんな風に変わっていくのか楽しみです。いくつか大きな謎も提示されていたので、そちらの掘り下げも気になるところ。もちろんラブコメ方面も期待してますよ。


イラストは遠坂あさぎさん。1巻からどんどんヒロインを脱がせていくぞという気概を感じる……!
魔王の姿も見てみたかったです。今後機会があるかなあ。


今のところの推しはシャーリ。闇メイドかわいい。

『リベンジャーズ・ハイ』感想

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

ストーリー
人体に有害な『砂塵』によって、文明が一度滅びた近未来。異能を操る『砂塵能力者』たちが出現し、力を持っていた。“掃除屋”チューミーは、因縁の復讐相手・スマイリーの行方を探りながら、殺しを請け負っている。あるとき、治安維持組織の『粛清官』に身柄を拘束されてしまったチューミー。だが、意外な提案を受け、一時的に協力関係を結ぶ。バディとしてあてがわれたのは、「優秀だがワケあり」のシルヴィ。出自も性格も正反対の二人は、反発しつつスマイリーを追うが……。第13回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。

第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品。
「砂塵」を操る能力者達が跋扈する世界で、都市の暗部に潜む復讐者と都市の治安を守る粛清官がタッグを組み巨悪に立ち向かうSF異能バトルアクション。
奥さん、バディものですよバディもの! 全てが真逆の二人が時にぶつかり時に協力しながら一つの目的に向けて動いていく王道展開がたまりません。
敵がハッキリと邪悪に振れきっているので主人公の復讐心に強い説得力があって良かったです。


人体に害を及ぼす「砂塵」が世界を覆ったことで人類の文明は一度滅び、そして残された人々の中より生まれた「砂塵能力者」たちによって再び花開いた、そんな近未来の世界が舞台。
主人公は2人。ある理由から宿敵を追うためだけに都市の暗部に生きている素性不明の復讐者・チューミーと、都市の治安維持組織に所属しているが能力の関係でパートナーに恵まれない粛清官の少女・シルヴィ。
粛清官に囚われたチューミーが司法取引によってシルヴィのパートナーとなり、強大な犯罪者・スマイリーを共に追うことになる、そんなストーリーです。
何しろ犯罪者と粛清官なものだから、初めはやはり凸凹コンビ。お互いに相手に隠していることも多く、なかなか足並みを揃えられない。うむうむ、これがバディものの醍醐味ってもんよ。様式美っていうもんよ。


危険な任務に二人で身を投じていく中、少しずつお互いへの信頼が生まれていく両者。そして明かされていくお互いの過去。チューミーもシルヴィも壮絶な過去を背負っていて、読んでいて胸が苦しくなってきてしまう。
スマイリー。最凶最悪の敵。彼がかつてチューミーに対して行った仕打ちときたら予想を超えた凄まじさで、復讐のためだけに生きるチューミーの生き様には納得せざるを得ない。
敵がしっかりと悪として描かれているということは良いことです。スマイリーにはスマイリーの理由があって悪を為しているのだけど、それすら同情の理由にならないほどの悪。
順調にスマイリーを追い詰めているかのように見えて、実は全て敵方に読まれているという恐怖感。これでこそ巨大都市の暗部に君臨するラスボスというものですよ。
まともに立ち向かってはとても敵わない相手に対し、チューミーとシルヴィは一矢報いることができるのか。終盤は手に汗握り、一息に読んでしまいました。
綺麗に終わってはいるものの、またこのコンビの戦いがぜひ見たい。続編に期待です。


イラストはろるあさん。シルヴィめっちゃ美少女ー! スマイリーめっちゃこええー!
最後のイラストのチューミーの描き方がニクいね。


謎めいた豪腕上司ボッチ・タイダラ、かっこいいな。

『千歳くんはラムネ瓶のなか』感想

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

ストーリー
「五組の千歳朔はヤリチン糞野郎」――学校裏サイトで叩かれながらも、藤志高校のトップカーストに君臨するリア充・千歳朔。彼のまわりには、外見も中身も優れた友人たちがいつも集まっている。圧倒的姫オーラの正妻ポジション・柊夕湖、努力型の後天的リア充・内田優空、バスケ部エースの元気娘・青海陽……。仲間たちと楽しく新クラスをスタートさせたのも束の間、朔はとある引きこもり生徒の更生を頼まれる。これは、彼のリア充ハーレム物語か、それとも――? 新時代を告げる“リア充側”青春ラブコメ、ここに堂々開幕!!

最強リア充によるリア充指南
第13回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品。
学園のトップカーストにしてハイパーリア充な主人公が、そのリア充パワーで不登校の非リア充生徒を引っ張り出し変身させていくリア充×青春学園ブコメディ。
主人公がリア充サイドということで発売前から話題だった今作。期待に劣らぬ面白さでした。が、1巻時点でいうと「リア充による非リア充育成物語」としての側面が大きく、「リア充のラブコメ」という要素は薄めだったかな。
主人公よりも彼に救われる非リア充くんの方に感情移入してしまったのだけど、さもあらん。でも非リア充視点から「このリア充主人公かっけーな!」っていう読み方も、それはそれで正しい楽しみ方のような気がします。


学園一の超リア充・千歳。顔よし性格よし成績よしスポーツ万能ノリもよくて下ネタもいけるパーフェクトマン。当然激モテ。彼の周りに集まるメンバーも当然、男女問わずカーストトップのリア充たち。進級早々クラスに集まってワイワイイチャイチャしちゃったりして、かーっ! むかつくね!!
そんな千歳が担任教師から頼まれて不登校の男子生徒・山崎の自宅へ突撃するところから物語は動き出します。
いやあ、正直ね。僕のような非リア充からすると、やっぱり千歳みたいな人間って嫌味に見えるわけですよね。山崎は卑屈だし身勝手だしリア充のことを一方的に敵視しているだけのチンケな残念ボーイだけれども、僕にもそういうところはあります。もし自分が引きこもっていたとして千歳みたいな奴が女連れで呼び戻しにきたらそりゃキレる。僕もキレる。
でもそんな非リア充が精一杯築き上げた壁をフルパワーでぶっ壊しにくるとんでもない奴もいる。スーパーリア充にしてスーパーヒーロー。千歳はそんな主人公である。
あと一緒に説得にやってきた夕湖(ヒロイン)ですけど、男に対する距離感が普通に近すぎてそりゃ勘違いされるよなと思いました・・・・・・。


千歳の指導の下、着実に非リア充の世界からリア充の世界へと足を踏み入れていく山崎。
ていうかリア充たちみんないい奴ー! 会話のノリとか見てるとやっぱ違う生物だわとも思うけど人格的にはちゃんといい奴ー!
そして何より、山崎の素直さが美徳。あれだけリア充に偏見を持っていて、そいつからの指導や指摘をこんなに素直に聞くことなんて普通はできませんわ。
千歳の誘導と自分の努力で、少しずつリア充の輪になじんでいく山崎の姿が眩しい。一歩踏み出そうとするかしないか、結局はそこの違いだったりするんだよなあ。
頑張って頑張って、でも届ききらなくて。そこで颯爽と現れる我らがリア充のヒーローっぷりがエグい。心情的には好きになれない部分もいっぱいある主人公ですが、めちゃくちゃ格好良いことだけは認めねばなるまい。
さて、ということで1巻は完全に山崎くんのお話だったけれど、では千歳の方はどうなのか?
リア充なりの苦悩のようなものも多少描かれていたようには思いますけど、まだ本格的に語られてはおらず、またラブコメに至っては始まってすらいない状況ですから、物語の本番はここからのはず。
リア充の世界のラブコメがぜひ見たいので、そちらの方面に期待しておきます。リア充街道を駆け上がった山崎と夕湖とで三角関係になったりしてほしい。もしくはクラスメイト全員振って明日姉に告るんだけどこっぴどく振られたりしてほしい。妄想が捗るな・・・・・・。


イラストはraemzさん。この表紙の夕湖はちょっと魅力的すぎて困りますね・・・・・・。
どうしても胸元にばかり目が行ってしまうのは許してほしい。


やー、このタイトルは天才的にエモいよね。