まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

一〇八星伝 天破無幻のヴァルキュリア

ストーリー
ある夜落ちてきた一〇八の魔星は、一〇八にんの処女たちに宿り、その身に人智を超える能力を与えた。
彼女たち「仙姑」を国の脅威と考えた皇帝は、「討仙隊」を立ち上げて対抗。
その討仙隊の一員、燕青は、仙姑たちと戦いながら記憶を失った自らの過去を探ろうとするのだが……。



古代中国、宋の時代。魔星が宿って力を得た108人の女たち「仙姑」と、それを追討する皇帝及び討仙隊との戦いを描いた中華ファンタジーアクション。
やったね水滸伝ネタだよ! 内容はほぼオリジナルですが、キャラの名前や設定などだけでもテンションが上がってしまいます。
黒幕が皇帝のすぐ側にいるのは中華モノらしいなと思ったし、事件の思わぬ真相には結構不意を突かれました。


主人公はこの1年間より前の記憶をなくしてしまった少年・燕青。
討仙隊に所属する彼は、同僚の林冲と共に、なぜか街中で襲ってくる仮面の集団との戦いの日々を送っています。
彼の想い人は、記憶を失ってすぐの彼に優しくしてくれた林冲の妹・小倩。
病弱で「天命の巫女」から15歳で命を落とすと予言された彼女を守り、支えながら、燕青と林冲は戦っていくわけですが……。
この小倩が実に健気で、確実に天命の時間が近づいていることを感じつつもけして不安や心配を表に出さないで、燕青たちのことを笑顔で見守るような明るい子だから、見ていて余計に切なくなってきます。
ヒロインとしてもとても可愛らしいので、どうにか天命を避けてくれと願う他ないのですけれど……。


仮面の集団を追う中で次第に明らかになっていく真犯人、そして過去に仙姑が起こした暴走の理由。
敵は国家の中枢に入り込んだ存在でした。何もかもを失った悲劇の夜。ストレスの溜まる展開が続きます。
しかし、そこで再び立ち上がってこそ主人公というもの。追われる身となりながらも、敵方の手に落ちた林冲を救うため、在野の仙姑・魯智深と協力して、地方の城に奇襲をかける一発逆転の展開が熱かったですね。
終章では、遂に燕青と林冲梁山泊へ足を踏み入れました! 原典の水滸伝では燕青や林冲を初め、梁山泊に集う人間がほぼ悲劇的な最期を迎えることになるのが気がかりですが、今作では大敵を打ち倒し、幸せを手にすることができるのでしょうか。次巻に期待しています。


イラストは未来電機さん。蛇矛を構えた林冲がカッコいいですね。
そしてスリットから覗くラインもまた素晴らしい……エロい。


中華モノならとりあえず宝貝を出しとけという風潮(好き)。